愛工大名電(愛知)は八戸学院光星(青森)との延長戦を制し、41年ぶりの夏2勝。

投打でチームをけん引するエースが、この日はバットで魅せた。延長10回裏、投手として7回途中5失点で降板した有馬は先頭打者として外角の直球を強振。「自分が点を取られて延長までいった。後ろにつなごうと打席に立ちました」。

打球は左翼手の頭を越え、三塁打に。塁上では今年6月に亡くなったチームメートの瀬戸勝登さんに向け、天に合掌した。無死二、三塁から7番美濃が中前へ運びサヨナラ勝利。工藤公康氏(59)を擁した1981年以来、41年ぶりの夏の甲子園2勝目をつかんだ。

途中降板も、前向きに右翼の守備へ向かった。「次も良い投手がそろっている。自分は守備と打撃で貢献しようと思った」。降板後の3打席では全て安打で出塁。打者として主将の責任を果たした。

そんな有馬の好きな言葉は「俺参上」。幼少期に好きだった「仮面ライダー電王」の決めぜりふだ。帽子にも書いているこの言葉で強気になれるという。記したきっかけは2年秋、父の久仁郎さん(48)の言葉だった。当時、県3回戦で中京大中京に惜敗を喫するなど「不安そうな顔してマウンドに立っていた」という息子に、「昔はもっとわんぱくやったやろ、俺参上と言って遊んでいた頃を思い出せ」と声をかけた。父の言葉で無邪気だった幼少期を思い出し、調子を取り戻した。有馬自身「マウンドに上ったときは一番高いところにいる。ここに参上しているという気持ちで(帽子を)見る」と今も言葉を大切にする。

父の金言も力に、3万5000人の大観衆の前でつかんだ劇的勝利。亡き仲間の名前から決めた合言葉、「勝ち登れ、頂点へ」を胸に、躍動は続く。【波部俊之介】

◆愛工大名電のサヨナラ勝ち 81年夏3回戦の北陽戦で中村稔(元日本ハム)が高木宣宏(元広島)から12回裏にサヨナラのソロ本塁打を放ち、2-1で勝って以来、春夏を通じ41年ぶり2度目。同校が夏の甲子園で2勝したのも、この年以来になる。