「青春ってすごく密-」。第104回高校野球選手権で優勝した仙台育英(宮城)の須江航監督(39)が発した言葉を、国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明氏(54)が分析した。

須江監督は優勝インタビューで、コロナ禍を過ごしてきた選手たちを思い「青春ってすごく密なので」という印象的な言葉を残した。これについて飯間氏は「『青春ってすごく密なので』は、選手たちをずっと見てきた経験から出た実感のこもった言葉だと感服しました。高校生たちの時間は非常に凝縮されていて、勉強も練習も含め、1日の中で記憶に残る一瞬が何度も訪れると思います。そのことを『青春ってすごく密』と短く表現できるのは優れた言語感覚です」と解釈した。

同時に、「密」という言葉の受け止め方が、変わる可能性についても飯間氏は指摘した。

「『密』といえば、現在のコロナ禍の中では人が密集する望ましくない状態を言うことが多くなりました。でも、本来は、『毛糸を密に編む』とか、『連絡を密にする』とか、詰まった状態、途切れない状態を言います。今回はこれが凝縮された状態という意味に使われたわけです。ここしばらくコロナ関係で多く使われていた『密』が、今またプラスの意味で使われる可能性を得たのではないでしょうか」

仙台育英は東北勢初の優勝という偉業に加え、須江監督の表現力で心に響く言葉も残した。【佐々木一郎】

◆飯間浩明(いいま・ひろあき)1967年(昭42)10月21日、香川県生まれ。早大第一文学部卒、早大大学院文学研究科博士課程単位取得。国語辞典編纂者。「三省堂国語辞典」編集委員。著書は「日本語はこわくない」(PHP)、「日本語をもっとつかまえろ!」など。ツイッター@IIMA_Hiroaki

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以下は、須江監督の優勝インタビューの一部。

「入学どころか、多分、おそらく中学卒業式もちゃんとできなくて、高校生活っていうのは、僕たち大人がすごしてきた高校生活とまったく違うんですね。青春ってすごく密なので。でも、そういうことは全部ダメだ、ダメだと言われて。活動をしててもどこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で、でも本当にあきらめないでやってくれたこと。でもそれをさせてくれたのは、僕たちだけじゃなくて、全国の高校生のみんなが本当によくやってくれて。例えば今日の下関国際さんもそうですけど、大阪桐蔭さんとかそういう目標になるチームがあったから、どんな時でもあきらめないで暗い中でも走っていけたので、本当にすべての高校生の努力のたまものが、ただただ最後に僕たちがここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」