今夏の甲子園で4強入りした聖光学院(福島)が同8強の九州学院(熊本)に競り勝ち、準決勝一番乗りを決めた。先発したエース右腕、佐山未来(3年)が故郷凱旋(がいせん)登板で「国体1勝」をマーク。9回を9安打4失点(自責3)で完投勝ちを収めた。

“リミッター”を外した佐山の目は、血走っていた。1点リードで迎えた7回。先頭に中前打で出塁され、スイッチが入った。「次の1点がすごく大事になると思った」。鬼の形相で腕を振った。1球投じるごとに雄たけびを上げ、闘志をあらわにし、後続を3者連続三振。1死二塁の場面では、5回に同点弾を浴びたヤクルト村上宗隆の弟で4番の村上慶太内野手(3年)を自己最速にあと1キロに迫る141キロの直球で空振り三振。魂の17球を披露した。

佐山 ランナーが出て、得点圏にも進まれてギアを上げた。抑えることができて良かった。

苦しいマウンドだった。初回から8回までは毎回走者を背負い、3度も追いつかれる展開。それでもリードは1度も許さなかった。90キロ台の変化球を交え、緩急で翻弄(ほんろう)。9安打を許しながらも、要所はきっちり締め、真骨頂の粘り強さが際立った。「初回から8回まで苦しい状況ではあったが、自分の投球ができた」と納得の表情で振り返った。

自然と気持ちは高ぶっていた。国体の開催地・栃木は佐山の生まれ故郷。「(栃木で)投げられることを意気に感じ、恩返しの気持ちを持ってマウンドに立った」。親戚をはじめ、友人らも応援に駆けつけており、みっともない姿は見せられなかった。小6夏以来となる公式戦での地元登板で、9回134球での完投勝ち。時を経て、成長した姿を見せた。

3年生にとってはチーム目標に掲げる「全国制覇」を狙える最後の舞台。「日本一を目指していきたい」と佐山。春、夏には届かなかった「頂点」だけを見据える。【佐藤究】