福島県勢初の「国体単独優勝」へマジック1が点灯した。今夏甲子園4強入りした聖光学院(福島)の背番号「10」、小林剛介投手(3年)が“マダックス”を達成。9回95球4安打の省エネ投球で高校初の完封勝ち。高2時から磨き上げてきた緩急がさえ、国学院栃木打線を手玉に取った。大学進学後は野球と区切りをつけ、教師の道へと突き進む左腕が最後の大舞台で快投劇を演じた。

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淡々と投げ続けてきた小林が、笑顔で左のこぶしを突き上げた。3点リードの9回2死。最後の打者を三ゴロに打ち取った。9回95球。わずか4安打に封じ、スコアボードに最後まで「0」を並べた。大リーグの名投手、グレッグ・マダックスの代名詞とされる「100球未満での完封」でチームを初の「国体ファイナル」へと導いた。「試合前に(斎藤智也)監督から『完封する気でいけよ』と言われた。高校3年間の中でも、一番良い投球だった」と納得の表情で汗をぬぐった。

テンポの良さが際立った。5球以内での決着が打者31人中27人。2回に投じた球数はたったの4球。3回は6球、4回は9球、終盤の7回には8球とストライクをどんどん先行させていく。奪った三振は「2」。低めを徹底的に意識し、凡打の山を積み重ねた。「(相手)打者と対峙(たいじ)して感じることを意識しながら、右打者、左打者の内角で勝負することもできた」とうなずいた。

生命線の緩急が生きた。時折、球速が測れないほど遅く、緩いカーブを投じた。そのカーブにより配球にアクセントがつき、キレのある最速135キロ直球に相手の打者は差し込まれた。「真っすぐが早くないので、(打者の)目線をずらしたり、緩急を使った投球にこだわってやってきた」。高2時に自らを分析し、たどり着いた投球スタイル。本格派のような「剛」を捨て「柔」を磨き続けてきた成果を体現した。

覚悟を持って最後の舞台に臨んでいる。大学進学後は本格的な野球に一区切りをつけ、「中学校の先生になりたい」という教師の夢に突き進む。県勢初となる国体単独優勝、チーム目標に掲げる「全国制覇」を懸け、決勝は大阪桐蔭と激突する。「チームとして日本一が目標である以上は絶対に取りたい」と力を込めた。言わずと知れた西の横綱を下し、聖光ナインが県勢初の国体単独Vで大団円を迎える。【佐藤究】