立命館宇治(京都)がセンバツに出場する慶応(神奈川)を迎えて、14日に京都・宇治市内で練習試合を行った。試合が終わるとすぐに、めずらしい光景が広がった。

両チームの選手たちが交ざって4組に分かれ、約10人ずつが車座になって話し始めた。テーマは決まっていないが、話題が広がっていく。とっかかりはプレーの振り返り。たとえば「なんであの場面で二塁手がカバーに入ったの?」と質問が出ると、それに対する提案や意見が飛び交った。

場が温まってくると、フリートークの様相になった。立命館宇治の選手は慶応の練習方法に興味津々。慶応側からは「なんで関西なのに阪神ファンじゃないの?」など、くだけた質問も飛んだ。試合で3ランを放った慶応・清原勝児内野手(2年)は「直球に強くなるには」と質問を受け、照れながらも自分なりの打席での考え方を披露した。

初めて会った選手たち。最初はどのグループもぎこちなかったが、気付けば予定の30分が過ぎ、指導者が強制終了するまで会話が盛り上がっていた。

これは「アフター・マッチ・ファンクション」と名付けられた、試合後の交流会。両校が参加している「リーガ・アグレシーバ」(積極的なリーグ)の重要なアクションの1つだ。

リーガ・アグレシーバは公式の大会ではない。趣旨に賛同した学校が、各地でリーグ戦形式の練習試合を行っている。15年に大阪で6校から始まり、昨年は全国20の都道府県で計133校が参加。変化球制限、リエントリー制、低反発バットなど独自ルールを設けて「選手の未来」にフォーカスする。指導者の指導力向上も重要なテーマだ。

慶応がセンバツを間近に控えているため、この日の試合は通常ルールで行ったが、交流会の実施には慶応側も快諾した。

リーガを主宰するのは大阪・堺中央ボーイズを運営するNPO法人「BBフューチャー」の理事長、阪長友仁氏(41)。関東・関西を代表する文武両道校が交わる貴重な機会。両校のプレーを熱心に見つめ、指導陣ともじっくりと話し込んだ。リーガに参加している関西の指導者や、生徒も見学に来ていた。

慶応・森林貴彦監督(49)はリーガの理念を強く支持する指導者の1人だ。選手には、練習メニューから個々の課題まで自分たちで考えさせる。甲子園への最短距離ではないかもしれないが、チーム強化の足かせになるものでもない。

「言うならば『成長至上主義』です。高校で野球を終える子もいますが、もっと野球をやりたい、続けたいと思わせてあげたい。高校野球は教育の場としてすごく価値があると思います。もちろん全力で勝利を目指すのですが、そのプロセスも楽しんでほしい。『自分の野球』なんですからね」

高校球界に吹き始めた、新しい風に注目していきたい。【柏原誠】