V候補の大阪桐蔭が本領発揮でベスト4に進んだ。

エース前田悠伍投手(3年)が気合満点の投球で1失点完投。打線も3回に一気に攻め立て、先制の4点を奪って主導権を握った。

西谷浩一監督(53)はミーティングである“儀式”をした。

「36校で始まった大会だけど、日本一になるための本当の戦いが準々決勝から始まる。もう1度、フレッシュな気持ちで、新しい大会の初戦と思って戦おう」。歴代、ベスト8まで勝ち上がったチームに伝えてきた言葉だ。

甲子園を「山」と表現する指揮官。この先は胸突き八丁と選手に強く示した。前日の能代松陽(秋田)戦は甲子園最少の2安打で、初の1-0勝利。前日までの重苦しい雰囲気を一晩で断ち切る効果もあった。

前日は第1試合だったため午後の時間は十分にあったが、あえてグラウンドには戻らなかった。「自分たちで知恵を絞れ」と選手たちに任せた。選手は宿舎でおのおの話し合い、課題をつぶす時間にあてた。

「初戦」で勢いをつけるために、攻めの姿勢にもこだわった。「1球たりとも手を抜くことなく、攻めて攻めて攻めまくろう、と。それが必ず自分たちのリズムになるから」。

初回先頭の小川大地内野手(3年)が四球で出塁すると、すかさず盗塁のサインを出した。相手エースの日当直喜投手(3年)が登板する前に大阪桐蔭ペースに持ち込んだ。大会を通じたチームマネジメントができるのも、豊富な経験がなせることだ。

「攻める投球」を心がけた前田も完璧に期待に応えた。今大会自身最速の147キロを計測するなど直球に勢いがよみがえった。「1球1球気持ちを込めて投げることを意識していました。1番よかったのは直球です。体の状態もよく、ピンチでは全力でギアを入れて投げました。相手より1点でも多くと、泥臭さをチームとして体現できたことがうれしい」と納得の表情で振り返った。

史上初の2度目のセンバツ連覇へ、大事な「初戦」をものにした。大阪桐蔭に最後のギアが入った。【柏原誠】