歴代最多の高校通算140本塁打を誇る花巻東(岩手)の佐々木麟太郎内野手(3年)の高校野球は、涙で幕を閉じた。昨夏王者・仙台育英(宮城)との準々決勝に「3番一塁」で出場し、4打数無安打1四球。9回は二ゴロに倒れて最後の打者になった。夏は初めての甲子園だったが、大会通算16打数6安打2打点、ノーアーチで聖地に別れを告げた。今後の進路に関しては明言しなかった。

甲子園で奇跡が起こった。3番佐々木麟の目は潤んでいた。4番北條から始まった9点を追う9回の攻撃。8人がつないで4点を返し、なおも2死一、二塁(暴投で直後に二、三塁)で打席が回った。仲間を信じ、ヘルメット姿で出番を待ち続けた。5球目、139キロ内角直球を捉えた打球は二塁へのゴロ。ユニホームを泥だらけにしながら必死のヘッドスライディングも、最後の打者になった。試合後、涙声でこう言った。

「(9回に打席が回り)正直、うれしかったですし、『自分まで回す』『最後の攻撃だ』って、みんなが言ってくれていた。本当に回ってくるなんて最初は考えてなかったんですが、本当に幸せだなって。打席に入る前は『みんなにありがとう』と思っていました」

184センチ、113キロのがっしりとした体形で、これまでいなかったタイプのスラッガーだ。世間からは「やせるべき」という声もあるが、父佐々木洋監督(48)は長距離砲としての才能を信じて疑わない。

「『やせた方がいい』という声もありますが、私的にはあのまま行った方がいいと思う。彼の個性ですし、細くして率を残すような選手ではないので。個性を壊さないように可能性を伸ばしていきたい」

佐々木監督からは県外の高校への進学を勧められたが、反対を押し切って花巻東に入学した。佐々木麟は「監督さんとは親子関係、縁を切って高校野球をここでやらせていただきましたが、一番厳しく指導してもらった」と感謝した。

今後の進路は明言しなかった。「まだ全く考えられないですし、どう歩んでいくか何も決めていない。今後に関しては岩手に戻って、ゆっくり決めると思いますし、現段階では自分からは何も言えないです」。同監督らと話し合う意向だ。

「自分の野球人生は終わりではない」と甲子園の土は持ち帰らなかった。大きな夢がある。大リーグでプレーし、世界一のホームランバッターになる-。野球人・麟太郎の物語は、まだまだ序章だ。【山田愛斗】

◆花巻東・佐々木監督(息子・佐々木麟との2年半を振り返り)「いい先輩たちに恵まれた。(目を潤ませながら)最初はうちに来ない方がいいと思っていたんですが、先輩や同級生、トレーナーら、みんなに支えてもらった3年間でした」