しつこく諦めず粘り強く戦う“ゾンビ青森山田”の精神は健在だった。22年夏に深紅の大優勝旗の白河関越えを果たした仙台育英よりも1年早い21年夏、東北の中学球界に日本一の歴史を刻んだ青森山田リトルシニア。その日本一を知る世代が躍動した。

4-3で迎えた9回表に1点を返され、その裏に試合を決められず延長タイブレークに突入。10回表、リトルシニアでエースナンバーを背負った桜田朔投手(2年)が登板。しかし「すごく緊張していて…」。10回無死一、二塁、桜田が犠打の処理を悪送球し1失点。浮ついたまま、なおも無死二、三塁のピンチでボーク。ミスから2点を献上した。

9回に追いつかれ、10回表に2点。流れは羽黒に傾いていたが、“ゾンビ青森山田”はここからが粘り強かった。10回裏2死二、三塁、伊藤英司内野手(1年)の右前2点適時打で同点。後輩の援護に桜田も「チームメートに助けられた」と笑顔。11、12回は走者を進められながらも、立て直して見事「0」に抑えた。

13回表に安打と暴投で2失点。窮地を救ったのはリトルシニアからの女房役・橋場公祐主将(2年)だ。13回裏1死二、三塁、真ん中高めの直球を振り抜き、中越えの同点適時三塁打。橋場は「追いつかれても、どれだけ点数を取られても、『1点ずつ返していくぞ』と、ベンチの中で全員が声を出して諦めなかったことがこの結果につながった」。三塁ベースを何度もたたき、雄たけびをあげた。

最後は、桜田、橋場の代から試合に出場し、自身が最上級生となった22年夏にも日本一に輝いた菊池伊眞内野手(1年)が決めた。13回裏1死三塁、わずか3球で2ストライクと追い込まれたが、ファウルで粘った。「心臓が持たないんじゃないかってくらい緊張していました。本当にドキドキする試合」。耳に響く心音を鎮めながら、粘りに粘った10球目を中堅へと高く上げ、サヨナラ中犠飛。菊池伊は「シニアから受け継いだゾンビ野球を体現できました」。劣勢から何度でもよみがえる青森山田が、センバツの権利を喰らいに行く。【濱本神威】

センバツ目指し東北大会 学法石川 日大山形、青森山田、一関学院が8強/詳細