<高校野球千葉大会:沼南高柳2-1鎌ケ谷西>◇1回戦◇11日

 「もっとこの仲間たちと野球がしたかった」。福島県からの避難生徒、鎌ケ谷西の新田心一郎内野手(3年)は涙で声を詰まらせながら話した。東日本大震災からこの日で4カ月。千葉県で迎えた最後の夏は沼南高柳に1-2で1回戦敗退という結果に終わった。「自分がこっちにきて温かく迎えてくれた仲間と全力でプレーできてよかった」と一緒に練習した3カ月を振り返り、何度も「楽しかった」と繰り返した。

 どうしても野球がしたかった。福島第一原発の事故で避難を余儀なくされ、父の勝さん(44)と弟2人と3月下旬に着の身着のままで市川市に引っ越してきた。野球道具は一切持ってきていない。始業式前日に鎌ケ谷西にジャージー姿で訪れ、入学が許可された。翌日には野球部の見学に行き、野球部の生徒から「よろしくな」と声をかけられた。森藤一樹主将(3年)は「1年のときからずっと一緒にやってるみたい」と話した。積極的に声を出し鼓舞する姿はすぐにチームになじんだ。3カ月という短い期間だが彼らの絆は固い。

 1点を追う8回にはマウンドに上がった。双葉翔陽では今夏はエースとして期待されていた。昨秋新調した投手用グローブは今は手元にない。1回を3人できっちり抑えた。スタンドからも「ナイスピッチング!」と歓声が上がったが、あと1歩及ばなかった。

 今後は中学生の頃からの夢に向かって突き進む。165センチと小柄だが持ち前のバネを生かして競輪選手を目指す。競輪ファンの勝さんの影響で志すようになった。下半身を鍛え上げ、9月の競輪学校の試験に臨む予定だ。勝さんは「息子は弱音を言わない粘り強い子。支えてくれた皆さんへの感謝の気持ちを忘れずに頑張ってほしい」と期待を寄せる。

 かつてのチームメートたちは双相連合として14日に初戦を迎える。「僕はこっちで楽しんで野球ができた。みんなも頑張ってほしい」とエールを送った。