<高校野球秋田大会:明桜7-4西仙北>◇15日◇1回戦

 秋田で70歳の新監督が“初陣”を制した。明桜が西仙北に勝利。先月就任したばかりの三浦第三(だいぞう)監督(70)は、秋田商を春夏3度の甲子園に導いた経験を持つ。11年ぶりの現場復帰を白星で飾った。

 試合前、独特の雰囲気を漂わせながら、ノックバットを振り回す。正確なバットコントロールで、次々にボールを打っていくのは70歳の新監督。軽快な動きとは裏腹に、心境はドキドキだった。「これだけ立派なチーム。甲子園に出たときよりも緊張しました」。ノックの成果はゲームで証明された。5回裏1死二、三塁のピンチを、挟殺プレーによるダブルプレーでしのぐなど無失策。半世紀以上も後に生まれてきた選手たちが、期待に応えた。

 選手を信じ切った。80年に秋田商を率いてセンバツ8強入り。当時は相手監督が「何をしてくるかわからない」と恐れた“魔術師”だった。時は流れて11年ぶりの夏の舞台。無死で走者が出れば必ず犠打で進めた。「子どもたちは本当にバントがうまいんです。動かなくてもよかった」。強豪校らしく小技にスキのない選手をたたえた。

 明桜を率いてまだ1カ月だが、監督生活は31年目。00年に大曲農の監督を辞めてからは、ノースアジア大、秋田シニアで野球を教えた。大学生から小中学生と年齢層が幅広く、指導は難しかった。それでも自らノックを行うことだけは変わらなかった。外野の頭を軽く越す力もある。70になっても第一線にこだわる理由について「自分は野球バカ。野球しかないので」と無邪気に笑った。まだまだユニホームを脱ぐつもりは毛頭ない。【湯浅知彦】