<高校野球山梨大会:山梨学院大付10-3日本航空>◇24日◇決勝

 山梨学院大付が日本航空を破り、2年ぶり5度目の夏の甲子園切符を手にした。今大会全5試合に登板したエース左腕、広瀬直紀(2年)が3失点完投。1度は逆転を許したが、同点の8回に相手投手の押し出しで勝ち越した。8、9回には計7得点。5戦連続となる2ケタ安打の猛攻で締めくくった。過去4度の甲子園では2回戦どまり。今夏は最高成績を目指す。

 最後のフライが遊撃手のグラブに吸い込まれると、マウンドには歓喜の輪が広がった。ベンチから飛び出した山梨学院大付ナインが、ジャンプしながらエース広瀬を取り囲む。連投の疲れも見せず、回を追うごとに球速を増した2年生左腕は「本当にうれしい。今まで支えてくれた人たちに、勝ちで気持ちを伝えられたと思う」とはにかんだ。

 かつて社会人野球の東芝で都市対抗を制し、MVPにあたる橋戸賞を受賞した須田喜照監督(40)が育てた秘蔵っ子。広瀬は2回1死からの6者連続を含む、11三振を奪った。4回には四球から3失点するも、右打者には逃げるチェンジアップ、左打者はスライダーでかわして5回以降はわずか被安打1。7回の打席では、カウント2ボール1ストライクから「投手心理で絶対カウントがほしいはず」と直球を狙い打ち。同点打も放った。

 全5試合に登板し4試合完投のエースの力投に打線も応えた。4回には、準決勝まで4戦連続本塁打の大会新記録男・4番小林義弘内野手(2年)が先制の右前適時打。同点の8回には小林が敬遠されたが、押し出しで勝ち越してから7安打7得点とダメ押しした。2打点の加藤久也内野手(2年)は「準決勝のビデオで全部研究してきましたから」とニヤリ。自慢の強力打線は16安打。5試合連続2ケタ安打で、計61安打で42点をたたき出した。

 実は広瀬や小林を含む、レギュラー9人中5人が2年生なのも山梨学院大付の特徴だ。全員が寮で共同生活。下級生が堂々と意見を言える環境を普段からつくっている。大会前、全部員おそろいで作ったポロシャツには「SND(スナダ)48」「砂田一家」の文字。毎日砂田球場で一緒に練習する48人の部員が、まさに家族のようなチームワークで強さを生む。

 もちろん、それをまとめるのは3年生。2年前の甲子園をスタンドで応援した田口蒔人主将(3年)は「あの独特の空気を経験させてもらったのは、今年に生きるはず」と自信を見せる。3度宙を舞った須田監督を、甲子園の勝利で再び喜ばせたい。【鎌田良美】

 ◆山梨学院大付

 1956年(昭31)創立の私立校。野球部は57年に創部。生徒数は1042人(うち女子510人)。甲子園出場は春1度、夏は5度目。主なOBは巨人松本哲也、元ヤクルト伊藤彰。所在地は甲府市酒折3の3の1。古屋忠彦校長。

 ◆Vへの足跡◆

 

 

 2回戦11-1甲府昭和3回戦9-6富士河口湖準々決勝5-4東海大甲府準決勝7-0甲府南決勝10-3日本航空