12年秋のドラフトは「高校BIG3」に注目だ。筆頭は花巻東(岩手)の191センチ右腕、大谷翔平(2年)。昨夏の甲子園で2年生史上最速の150キロをマークし、プロのスカウトから「本物のダルビッシュ2世」との声が上がる。いち早く秋のドラフト候補をチェックした。

 雪の積もる花巻。室内練習場で湯気を立たせながら、191センチの大谷がスクワットのバーベルを担いでいた。「高校卒業までに160キロを投げて、全国制覇」という目標に向けて肉体改造の真っ最中。昨夏76キロだった体重は、4カ月で86キロまで増えた。朝3杯、夜7杯のご飯に加え、授業や練習の合間など2時間ごとに弁当1個を平らげる。「この冬は、増やしすぎかなと思うまで増やす。まずは90キロ」と厚みの増した体をさすった。

 全国に大谷の名を知らしめたのが、昨夏の甲子園だった。1回戦の帝京戦で救援登板。5回2/3を3失点(自責1)で負けたものの、150キロをマーク。05年夏に駒大苫小牧の田中(楽天)が記録した2年生の甲子園最速に並んだ。それも、左太もも裏痛で「全力で投げられない」状態で。下半身を使わない「手投げ」で、驚かせた。

 当時は肉離れと思われたが、精密検査の結果は左股関節の「骨端線損傷」。身長はまだ伸びており、その成長痛に伴うものだった。甲子園後は治療に専念。センバツ切符がかかった昨秋の東北大会準決勝でも投げず、光星学院に8-9で敗れた。佐々木洋監督(36)が「甲子園に行くことだけ考えれば投げさせたいが、先がある子ですから」と将来性を最優先する大器だ。

 振り下ろす右腕は、指先が背番号に達するほど、しなやかに体に巻きつく。肩、肘、手首すべてが柔らかい。2年春の練習試合では151キロを投げた。そんな逸材を甲子園も待っているのか-。光星学院が明治神宮大会で優勝し、今春センバツの神宮枠を東北地区が獲得。微妙だった花巻東の出場が一転、確実になった。今月から本格的な投球を再開予定だ。

 「みちのくのダル」と言われるが、本家ダルビッシュは東北高2年の冬で194センチ、83キロ、最速149キロだった。既に身長以外で上回る。西武菊池を輩出した花巻東から、再び怪物誕生の予感が漂ってきた。【木下淳】

 ◆大谷翔平(おおたに・しょうへい)1994年(平6)7月5日、岩手県水沢市(現奥州市)。姉体小3年の時、水沢リトルで野球を始める。水沢南中では一関シニアに所属し、中学3年の時に全国大会出場。

 1年春から花巻東の4番。2年春の県大会地区予選(対花巻南)でサイクル安打を4打席で達成し、投げては5回参考ノーヒットノーランだった。高校通算27本塁打。

 182センチの父徹さんは、社会人野球の三菱重工横浜でプレー。170センチの母加代子さんはバドミントンで国体出場。187センチの兄龍太さんは昨季まで独立リーグ四国ILplus高知でプレーした。164センチの姉結香さんはバレーボール経験者。

 高校入学時は188センチ、66キロと細身。右投げ左打ち。血液型B。