<高校野球南北海道大会:苫小牧東2-1駒大苫小牧>◇6月30日◇室蘭地区代表決定戦◇苫小牧緑ケ丘

 苫小牧東が昨夏準優勝の駒大苫小牧に逆転勝ちし、5年ぶり21度目の南大会切符をつかんだ。最速144キロ右腕、鳥越翔(かける)投手(3年)が強力打線を6安打1失点に抑えた。駒大苫小牧は夏15年ぶり地区敗退となった。

 翔(かける)の名前のように最後はマウンドで大きくジャンプした。昨夏代表決定戦のお返しで、今度は駒大苫小牧から円山切符をつかんだ。苫小牧東の鳥越は、三塁側応援席に向かって両手を上げた。全校応援のクラスメート、駆けつけたOB、保護者に感謝の気持ちを込めた。尾崎隆太捕手(3年)に抱きつくと感極まった。

 2試合23得点と勢いに乗る駒苫打線との対戦を楽しんだ。「手ごわい打者だらけ。昨年も対戦して顔も知っているので、投げていて楽しい」と、5回までは被安打2、無得点に抑えた。6回2死二塁から右翼線二塁打で1失点。それでもチームの反撃を信じて粘り強く、ていねいに投げた。

 打っては、同点で迎えた9回先頭打者として二塁打で口火を切った。1死三塁となり、佐藤歓三塁手(2年)の三遊間を抜くタイムリーで、自ら決勝のホームを踏んだ。その裏、駒大苫小牧に2安打を許したが得点は許さず、リベンジが完結した。

 「みんなが良く守ってくれました」と、鳥越はチームメートに感謝した。完投したエースに、汐川裕彦監督(44)は「良く踏ん張りました。精神面でたくましくなりました」と目を細めた。昨夏は144キロ速球派投手として、力に頼りすぎた面があったが、この夏は制球、駆け引き重視の最速142キロ。「ピッチングを楽しんでいます。ピンチの時こそ」と、尾崎捕手はメンタル面の進境を認めた。

 ひとつの約束が果たせた。鳥越の父幸男さん(享年49)は3年前に海の事故でなくなった。宮崎の強豪、都城で投手だった父の影響で野球を始めた鳥越は「南大会に出て甲子園を目指す」と誓っていた。母真由美さん(50)が応援席から見守る中、約束通りのピッチングを披露。今度は59年以来の甲子園にチーム一丸となって挑む。【中尾猛】