<高校野球福島大会:聖光学院10-9学法石川>◇25日◇準々決勝◇平野球場

 聖光学院が2回途中から救援した背番号11左腕・今祐也(3年)の力投で、学法石川との死闘を制した。エース石井成(2年)が2回途中8失点で降板。2番手の今が7回2/3を4安打1失点に抑え、逆転勝利を呼んだ。

 どん底からはい上がった今が、がけっぷちの聖光学院を救った。2回にミスも絡んで一挙6点を失い4-8。百戦錬磨の斎藤智也監督(50)が「こんな試合やったことがない」と言うほど、早々に追い込まれた。それでも今は「負ける気はしなかったので、倒れてもいいと思った」と気迫を前面に出し、直球とフォークを織り交ぜて凡打の山を築く。監督が「あんなに声を出して投げたのは初めて見た」。園部聡内野手(3年)も「回が終わるごとに息が荒くなっていた」という熱投。9回、最後の打者を見逃し三振に仕留めた背番号11はガッツポーズを見せたが「8回から腕もしびれていて、急に力が抜けた。整列したところまでしか覚えてない」。脱水症状で意識を失うほど、魂を込めて109球を投げ抜いた。

 1年前の夏は“3軍”だった。入学直後に左ヒジを骨折。手術せずに約1年間リハビリの毎日を送り「ピッチャーやめろ」と言われたこともあった。中学時代は桐蔭学園(神奈川)のエース左腕・斉藤大将(3年)の陰に隠れるように外野手。何度も挫折を味わい「投げられることが当たり前じゃない」と痛感してきた。だからこそ、本格的に投球を始めた昨年6月以降、1球1球に勝負を懸ける。エース番号を付けなくてもいい。「何が一番うれしいかって、チームが勝つことです」と胸を張って言えるまでに頼もしくなった。

 苦労人の力投でつかんだ勝利が持つ意味は計り知れない。今が「誰か1人でも負けると思ったら、コールドで負けていた」と言うように、苦境に立たされても聖光ナインは笑顔を絶やさなかった。斎藤監督は「みんな頑張った。でも今(の奮闘)が本当にうれしい」と選手たちの成長に目を細める。県内公式戦の連勝を90に伸ばし、夏7連覇まであと2つ。たくましさを増した聖光学院に、死角は見当たらない。【鹿野雄太】

 ◆今祐也(こん・ゆうや)1995年(平7)8月3日、東京・江戸川区生まれ。臨海小3年時に葛西ユニオンズで野球を始める。清新二中では城東ボーイズに所属。ポジションは主に外野手。聖光学院で投手に転向し、2年秋に初のベンチ入り。好きな選手はロッテ成瀬。176センチ、80キロ。左投げ左打ち。家族は両親、姉、兄。血液型B。