<全国高校野球選手権:木更津総合7-5上田西>◇11日◇1回戦

 木更津総合(千葉)の「倍返し右腕」千葉貴央投手(2年)が、完投&決勝打で08年以来5年ぶりの夏勝利に導いた。昨夏は初戦敗退した舞台で9回5失点完投。2点を追う5回には勝ち越しの適時打を放ち、上田西(長野)を破った。

 やられたらやり返す。倍返しだ-。人気ドラマ「半沢直樹」の主人公のように木更津総合のエース千葉は1年ぶりの甲子園で燃えていた。「去年、大阪桐蔭に負けて思いました。甲子園で勝ちたいと。甲子園の借りは甲子園で返したい」。雪辱を誓った男は、自らのバットで試合を決めた。

 2-2の5回1死二塁。外角高めのスライダーをたたき付けた。打球は一塁手の頭を越え、右翼線を破る勝ち越しの適時打。しかし千葉は笑顔を見せずに塁上から鋭い視線を送って味方を鼓舞すると、猿田、谷田に連続2点適時打が出て計7点。計11人の猛攻で一気に突き放した。

 昨夏は優勝した大阪桐蔭との初戦(2回戦)で2-8で敗退した。肩、腰に故障を抱えながら志願して登板したが、終盤に救援登板で2回1失点。「先輩に連れてきてもらい、ただ来ただけで終わった」と苦さが残った。悔しさから、敗退した日の夜に母昌子さん(46)に「次は僕が甲子園に連れて行く。だから砂は持ち帰らない」とメールで宣言したほどだった。

 雪辱のために「浜ダッシュ」でスタミナ強化に励んだ。海砂が敷かれた片道50メートルを19秒で往復するのを8本。「野球部をやめたくなる」と部員が口をそろえる練習に率先して取り組んだ。千葉大会の準決勝、決勝では延長を含めた22イニング318球を1人で投げ抜いた。この日はそのスタミナをベースに間を使う投球で打線を封じた。足を上げるタイミングを打者ごとに変更。130キロ中盤の直球と90キロ台のスローカーブで緩急をつけて9回を8安打5失点で勝利をつかんだ。

 マウンドでは表情を崩さないが、実は面白キャラ。学校では変顔などで笑いを取る。野球部では見せない一面でクラスでは人気者だ。念願の1勝を遂げたが、「目指すは優勝。次も全力を出し切りたい」とお立ち台では笑顔を封印。“倍返し”の夏は始まったばかりだ。【島根純】

 ◆千葉貴央(ちば・たかお)1996年(平8)11月1日生まれ、千葉県出身。小学1年から高郷スターズで野球を始め、投手一筋。七林中時代は千葉県選抜チームに選出され、横浜のエース伊藤将司投手(2年)とチームメートだった。木更津総合では1年春からメンバー入り。好きな食べ物はいなりずし。憧れの投手は楽天田中。179センチ、75キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄2人。