<全国高校野球選手権:前橋育英1-0樟南>◇16日◇2回戦

 甲子園の新怪物、前橋育英(群馬)高橋光成(こうな)投手(2年)が、2試合連続の「1-0完封」を決めた。最速144キロをマークし、6奪三振ながら樟南(鹿児島)に得点を許さず、荒井直樹監督の49歳誕生日を祝った。

 3者連続三振を確信していた。1-0で迎えた9回2死三塁。前橋育英・高橋光は最後の打者を追い込むと、ロジンバッグを少し長めに触った。「追い込んだら三振が取れると確信しました」と、はやる気持ちを抑えた。ゆったりと間を取って外角低めに投じた128キロのスライダーは、バットにかすることなくミットに吸い込まれた。初戦の9者連続に及ばないが、3連続奪三振で試合を締めた。

 調子は良くなかった。初回から変化球が指から抜け高めに浮いた。最速148キロの直球も144キロ止まり。先制直後の5回裏に、その真っすぐを狙われた。連打で1死一、三塁のピンチ。「あのタイミングでやるとは」とスクイズを仕掛けられた。三塁手の荒井が本塁へ好送球し、タッチアウト。主将の好プレーで波に乗った。「バックを信じて投げられた」と6回以降は1人しか走者を許さない投球を見せた。

 お盆に勝利を届けたい人がいた。昨年10月に87歳で亡くなった祖母さだ子さんだ。「おばあちゃん子」で亡くなった時に初めて、大好きな野球の練習を休んだ。さだ子さんの作るぼた餅ときな粉餅が大好物だった。観戦した父義行さん(41)は「初盆だし、この空の上から光成の活躍を見てくれていると思います」。宝物は祖父母から買ってもらったグラブで、ボロボロになった今でも手入れをして大事にしている。

 試合後、「監督の誕生日に何としても勝ちたかった。いいプレゼントができた」と恩師にも特別な1勝を届けて笑顔がはじけた。18日の3回戦では春夏甲子園5度優勝の横浜と対戦する。「2年生中心のチーム。同級生には絶対負けられない」と意気込む。そして一気に主役に躍り出る。【島根純】

 ▼前橋育英・高橋光が1回戦の岩国商戦に続いてスコア1-0の完封勝利をマークした。1点も与えられず精神的にタフな状況で投げる1-0完封を続けたのは、76年中村(PL学園)以来、大会史上37年ぶり7人目。打力が向上した74年の金属バット採用後は3人目になる。2年生では60年大塚(大宮)73年土屋(銚子商)に次ぎ3人目。大塚は164センチ、56キロと小柄な横手投げだった。土屋は2試合とも延長12回で、2回戦の作新学院戦は味方が押し出し四球でサヨナラ勝ち。怪物江川に投げ勝った試合が1-0完封だった。【織田健途】