<全国高校野球選手権:日大山形5-2作新学院>◇17日◇3回戦

 日大山形が作新学院(栃木)を下し、06年の同校以来となる山形県勢最高タイの8強入りを決めた。1点を先制された1回裏、6番浅沼孝紀捕手(3年)が逆転の2点適時打を左前に運んだ。8回にも2長打で2点を追加。日大三(西東京)との2回戦に続く2ケタ安打で、「強打の日大山形」を全国に印象づけた。

 日大山形が、またしても全国区の強豪を撃破した。優勝候補の日大三に続き、11年夏4強、12年夏8強の作新学院を退けた。いずれも2ケタ安打で打ち勝った。荒木準也監督(41)は「迷いがないというのがテーマ。粘り強く戦ってくれた」と、けれん味のないスイングで快音を響かせた選手をたたえた。

 1点を先制された直後の1回裏。2死満塁で、6番浅沼が、左前に逆転の2点適時打を放った。「スライダーが甘く入ってきた。甘くきたら全部振っていこうと思っていた」とフルスイングした。守りでも、エース庄司瑞(3年)を巧みにリードして2試合連続の完投勝利を“アシスト”した。

 弟としての意地がある。兄佑亮(東北福祉大1年)は昨夏の4番中堅で、1年時から主力だった。「兄とは小、中学とずっと一緒にやってきて、比べられて嫌なこともあった」が、荒木監督が言ってくれた。「お前はお前だから」。高校入学後、投手から捕手に転向することを勧めてくれた恩師の一言。兄のように大きな当たりは、そうそう打てないかもしれない。だが、兄が踏めなかった甲子園で2試合連続のマルチ安打。今は野球が楽しくて仕方ない。

 1点差とされた8回には、8番庄司、1番青木龍成外野手(2年)の適時二塁打で2点を奪って逃げ切った。どこからでも安打が出る雰囲気。荒木監督は「うちは5年間、(全体の打撃)練習では手投げオンリー。打撃マシンで打つと、タイミングを合わせるだけで打ててしまう」と明かす。1時間振り続けるメニューなどで養ったスイング力に、1球ごとにコースも球質も変わる生身の人間が投げた球で対応力を加える。春は東北大会にも出場できなかったが、折れずに貫いてきたことが大舞台で結実した。

 当初の目標は4強入りだった。が、前日16日のミーティングで荒木監督は宣言した。「次勝ったら、目標を日本一にするから」。県勢初の準決勝進出をかけた大会第12日の準々決勝は、全国制覇の経験もある明徳義塾(高知)に挑む。奥村展征主将(3年)は「並んだだけでは意味がない。山形の歴史を塗りかえたい」。強力打線の看板を引っ提げ、臆することなく挑む。【今井恵太】