<高校野球南北海道大会:東海大四7-0函館大有斗>◇18日◇1回戦◇札幌円山

 その右腕で、負の歴史を断ち切った。南北海道は東海大四のエース西嶋亮太投手(3年)が、函館大有斗を1安打シャットアウト。緩急を巧みに操る省エネ投法で6回まで無安打に抑え、ここ3年続いていたチームの「7・18」敗退に終止符を打った。

 不思議な運命を、楽しんでいた。1回をわずか6球。西嶋は試合開始からほんの1分で立ち上がりのマウンドを終えると、軽やかな足取りでベンチへ駆け戻った。打たせて取って、5回までは完全ペース。7回にこの日唯一の安打を許したものの、無四球でスコアボードに7つの0を並べた。

 いつもより多めにスローカーブをちりばめたのは「暑さもあったので、いかに楽できるか考えて」と言うのだから、憎らしい。加えて、球速50キロ台ほどという“超遅球”も織り交ぜた。函館大有斗とは、昨秋も一昨年夏も対戦している。「攻め方が読まれているだろうから、想定外のことをしようと思っていた」と打者を幻惑。「(無安打無得点は)意識していなかったけど、このまま0で抑えて、早く試合を終わらせようと考えていた」。省エネの71球で勝利をつかんだ。

 7月18日は、チームにとって、特別な日だ。偶然にも11年から函館勢との対戦が続いており、3年連続で敗退。西嶋自身、高校入学以来、毎年、この日になるとマウンドへ立ち、一昨年は函館大有斗にコールド負け。昨年は、函館大柏稜にサヨナラ負けを喫した。忘れたくても、忘れられない「チームのみんなが意識していた日」の思い出を、ようやく喜びに塗り替えた。

 「昨年までは自分に自信が持てなくて、マウンドでの迷いが表情に出てしまっていた」。短気を抑えるため、昨秋からはイニング始めに帽子を取り、つばに書いた「一生の絆」という文字を見つめる。「この仲間と最高の思い出をつくりたい。そのためには、甲子園へ行って、日本一にならないと意味がない」。精神的にタフになった背番号1はこの夏、地区から4試合24イニングを投げ、まだ無失点。「7・18」の呪縛を断って、さらなる高みへと突き進む。【中島宙恵】