<センバツ高校野球:鹿児島工0-1平安>◇30日◇3回戦

 平安(京都)が校名変更前ラスト甲子園で、5年ぶりに8強入りした。4月1日からは龍谷大平安に変わる。鹿児島工との延長再試合を、エース川口亮投手(3年)の完封で制した。

 だれよりも川口を知るはずの原田英彦監督(47)が、目を見張っていた。「甲子園で完封…川口が…」。あっけに取られる監督の前で、エースはスコアボードに「0」を9個並べてみせた。

 延長15回で引き分けた28日の試合で9回途中まで112球を投げ、中1日の再試合で自身初の完封。「自分がゼロに抑えれば勝てると思って投げていました。初完封?

 甲子園のマウンドの力です」。4回に挙げた1点を守りきった。

 慎重だった。1回と6回の無死一塁で、相手の犠打を封じた。一、三塁手のダッシュと同時に「真ん中に強い球を投げ込んで」(川口)打球が転がる範囲をせばめ、正面に来た球を二塁に送球。6回2死一、二塁では二塁に5回、一塁に1回としつこいけん制球で打者の打ち気をそらし、空振り三振に取った。

 原田監督からは、近所に住む婦人に似ている理由で「おばちゃん」と呼ばれている。171センチ、73キロの小柄でぽっちゃり気味の体格も、やや迫力に欠けていた。昨秋公式戦の防御率は3・16。下半身に安定感がなく、内角の厳しいところを攻めきれないことが課題だった。1日10キロ超のランニングで下半身を鍛えた。昨年末、後輩を激励に来た97年夏準優勝のエース川口知哉(元オリックス)の存在にも、刺激を受けた。成果は、内外角を自在に突いた完封投球に表れた。

 「甲子園でプレーすることがあれだけ選手の力になるのか」。たくましくなったエースに、原田監督もため息をつく。春夏通算90勝を達成。ラスト平安での初の春制覇まで、あと3勝だ。【堀まどか】