<センバツ高校野球:花巻東4-0明豊>◇29日◇2回戦

 全員でつかんだ8強入りだ!

 花巻東(岩手)が、4-0で明豊(大分)を下し84年の大船渡以来、25年ぶりの岩手県勢ベスト8進出を決めた。先発左腕の菊池雄星(3年)が、9安打されながら完封勝利。野手が打って守って、東北勢では大会史上22年ぶり3人目となるエースの2試合連続完封をアシストした。自らの役割をきっちり果たすナインが一丸となり、31日の準々決勝・南陽工(山口)戦に臨む。

 菊池が最後の打者を二ゴロに仕留めると、左手でガッツポーズをつくり、雄たけびを上げた。エースの声に引き寄せられるように、ナインが次々とマウンドに駆け寄る。「今日は野手のおかげです。あらためて、みんなで勝ったという感じがしました」。菊池はお立ち台で、ともに戦った仲間に感謝の言葉を口にした。

 3回と9回以外は毎回走者を背負った。そのたびに、内野陣が中心となってマウンドの菊池に向かって声を張り上げた。

 菊池

 1人で投げている気持ちはしなかった。みんなと一緒に戦っている気がして、楽しかった。(初戦より)今日の1勝の方がうれしいです。

 5回2死一、三塁では、ベースに当たりイレギュラーした難しい打球を、一塁手・横倉が好捕。6度も得点圏に走者を背負っても選手が一丸となってしのぎ、菊池に東北勢では87年河村文利(八戸工大一)以来3人目となる、センバツ2試合連続完封という勲章をもたらした。

 打っても、3回1死から俊足の山田隼弥(3年)が遊撃内野安打で出塁。1死満塁から3番の川村悠真主将(3年)が中前へはじき返し、2点を先制した。4回にも1点、5回にも中押しと効果的に加点。選手個々が自らの役割を果たした打線が、理想的な展開でエースを援護した。

 選手は新チーム結成時から続ける役割分担制で、グラウンド外でも自らの役割をまっとうする。「あいさつ徹底係」の菊池は仲間に礼儀を徹底。「復唱係」の横倉は佐々木洋監督(33)の言葉を大声で繰り返す。約50人の部員全員が個々の仕事の責任を持つことで、団結力を高めてきた。

 「楽しくて、頼もしいチームだと思う」と、川村主将が胸を張れば、佐々木監督も「みんながキャプテンみたいで、うまくまとまっている」と話す。準々決勝で勝てば、4強入りした84年の大船渡に肩を並べる。「このチームで、1日でも長く甲子園にいたい」と菊池。岩手の大先輩を越え、優勝旗をつかみ取るため、次戦も全員の力で勝利をもぎ取る。【由本裕貴】