<高校野球静岡大会:静清工9-0静岡東>◇5日◇1回戦

 たった1枚しかない夏の甲子園切符を掛けて戦う全国高校野球選手権静岡大会が開幕した。草薙球場で行われた開幕戦は、05年覇者の静清工が9-0で静岡東に7回コールド勝ち。119校が参加する第90回の記念大会で、最初の白星を飾った。8番五藤康明投手(2年)が投打に活躍。投げては3安打零封、打っては本塁打に適時二塁打を放った。今日6日は全10球場で1回戦27試合が行われる。

 投打にパワフルだった。静清工・五藤が3安打で7回零封。183センチ、96キロの体から繰り出す重い直球を武器に、12の内野ゴロを積み上げた。奪三振は1で「バックを信じて投げた」。6回裏、投手返しが右手の指に当たった。交代を打診されたが続投を志願。試合後も「4本の指がじんじんしてる」状態だったが「痛みとか関係ない。自分で抑えたかった」。最後まで闘争心は衰えなかった。

 打撃でも輝いた。4回に左翼ポール際へ高校2号本塁打。5回にも左越え適時二塁打を放った。「打つ方は何も考えずに振った結果です」。球種もコースも覚えていないほど、無我夢中でバットを振っていた。

 金城成久監督(45)は「自分の気持ちをコントロールできるので」と五藤を先発に指名した。そんな五藤でも、前夜は興奮していた。午後9時45分に消灯も、11時まで眠れなかった。午前1、3時に目が覚め、早朝5時には起きてしまった。試合直前、愛知に住む両親が三重から取り寄せている椿大社の「清め塩」をなめた。大事な試合の前だけにする作業。少しだけ落ち着きを取り戻した。「今は眠いです」。試合後、ようやく重圧から解放された。

 太りやすい体質で、中学2年時にはシニアの監督から「これ以上太ったら相撲部屋に入れるぞ」と言われたこともある。高校1年の夏には体重が111キロに達した。それでも、右ひじを疲労骨折するほど練習熱心な努力家は、1年で15キロの減量に成功した。体重と反比例し、最速は137キロに伸びた。

 16年ぶり3度目の開幕戦勝利を飾った静清工だが、過去2度は準優勝に終わった。「過去のことだから。まずは勝つことが大事」と金城監督。3年ぶりの優勝だけを狙う。【斎藤直樹】