<高校野球静岡大会:日大三島10-9富士>◇6日◇1回戦

 日大三島が最大7点差をはね返し、富士に10-9で逆転勝利した。9-9の同点で迎えた9回裏1死満塁で尾形一斗右翼手(3年)がサヨナラ安打を放ち、3時間7分の熱戦に終止符を打った。大会3日目は12日、1回戦27試合が行われる。

 あきらめない気持ちが奇跡を呼んだ。日大三島は4回表に8失点して2-9。しかし、ここから徐々に点差を詰め、同点で迎えた9回裏1死満塁。尾形がバットを振り抜くと、打球は前進守備の遊撃手の頭を越え中前に落ちた。「打った瞬間に決まったと思った」。スタンドの大声援とともにナインは歓喜に酔いしれた。松崎裕幸監督(39)も「こんな試合はもう2度としたくないけど、よくやってくれた」と褒めたたえた。

 昨夏3回戦の常葉学園菊川戦。同じく同点で迎えた9回裏1死満塁の場面で、スリーバントスクイズを失敗し、試合にも敗れた。「あの時はスクイズと決めていたけど少し迷いがあった」と振り返る同監督。今年は違った。「尾形。お前でチャンスは回ってくるぞ!

 決めてこい」。迷わず送り出した。そんな思いを受け取り打席に立った尾形が、見事に大逆転劇を完結させた。

 これがゴールではない。いままでにない1イニング大量8失点。また、それをはね返す経験もした。松崎監督は「何が起こるか分からないのが夏。選手たちも、それがよく分かったはず。この1週間でもう1度精神面を鍛え直す」と気を引き締めた。

 試合後には、尾形の元に熱戦を演じた富士の杉山隆俊主将(3年)らからウイニングボールが手渡された。「絶対に甲子園に行ってくれ」と熱いエールを受けた。「絶対に甲子園に行くよ」と答えた尾形。1つの山を乗り越えた日大三島ナインが、頂点への階段を1歩1歩勝ち上がっていく。【前田和哉】