<高校野球宮城大会:東陵8-1多賀城>◇8日◇2回戦

 霧は“お友達”だ。東陵が7回コールドの8-1で多賀城を下し、初戦突破した。試合は濃霧の影響で1時間13分も中断。同様の環境で練習を積むナインは、動揺を見せずに力を発揮。「吉兆」ともいえる霧を味方に、20年ぶり甲子園に向け快勝発進した。

 球場に立ち込める冷たい霧が、みるみる濃くなる。午前9時試合開始を13分遅らせ、照明を点灯して行われた試合。東陵が3回に2点を先制すると、4回1死一塁の攻撃中、ついにスコアボードの得点が見えないほどの深い霧に包まれた。試合は同9時53分から同11時6分まで中断された。

 だが、そんな状況にも東陵ナインに、戸惑いの色は一切ない。再開後も打線は着実に加点し、12安打8得点で試合を7回で終わらせた。しばらくは白い空に包まれる中でも、8度の飛球を難なく処理した。

 気仙沼市内の同校グラウンドは山中にあり、霧が発生することはよくある。それでも練習を中断することは、ほとんどないという。阿部和也中堅手(3年)は「途中から打球がまったく見えなかったですけど、慣れてますから」と笑い飛ばした。

 ある意味で「吉兆」だった。2年前の初戦も、同球場で濃霧によるノーゲームとなっていた。この日、7回途中4安打1失点と好投した名生康倫投手(3年)は、当時はスタンドで応援していた。「あの時も、これぐらいひどかったです。できるだけゴロを打たせるようにしました」と経験を生かした。

 「霧には不思議な縁を感じますね」と話す高橋洋一監督(37)は、同校が88年夏に甲子園初出場した時のエース。中断中もベンチ前でキャッチボールや素振りをしたナインの姿に「よく集中力を切らさなかった」とねぎらった。井上純(元ロッテ)らを擁した、あの夏からちょうど20年。霧が立ちこめようが、同校2度目の甲子園へ視界良好のまま突き進む。【由本裕貴】