春日部共栄(埼玉)に2代目「ウメさん」がいる。話題の球児や学校にスポットを当てる高校野球特集第3回は「血縁編」。平塚大将外野手(3年)の父は「ウメさん」の愛称で親しまれ、阪神、西武などで外野手として活躍した平塚克洋氏(44=現阪神スカウト)だ。97年にはエンゼルス松井、元オリックス清原和博氏(42=日刊スポーツ評論家)らとオールスターに出場した父の母校で、甲子園を目指す。暁星国際(千葉)には女優高畑淳子(55)の長男裕太内野手(2年)が在籍。多彩なジュニア球児を追った。

 父親譲りの、人なつこい笑顔がはじけた。平塚は「選手時代のお父さんに似てるって、よく言われます」と頭をかく。父克洋氏は現役時代、「ウメさん」の愛称で親しまれた。アニメ「ど根性ガエル」に登場するすし職人「梅さん」に似ていたからだが「似てないと思う」と首をひねる。

 父と同じ外野手。2回戦で敗れた春の県大会は、打率1割台と不振。一時、スタメン落ちしたが、背番号9を奪い返した。「最後の大会だから、安打を量産したい。いろいろ考えても打てないから、とにかくバットを振ってます」と、鏡の前で素振りをしている。

 練習は人一倍してきた。中学時代から「手の皮がむけて、洗うたびに痛かった」というほどティー打撃を繰り返した。新聞紙を丸め、粘着テープを巻いた球を近所の高架下で打ち込んだ。「スイングだけで息が上がった。でも、それでバッティングに自信がついた」と目を見開いた。

 野球に興味を持ち始めたとき、父は現役を退いていた。「(プレーぶりは)全然覚えてない。ヒーローインタビューを見て、お父さん出てるな、って思ってたくらい」と振り返った。野球人の「DNA」は受け継いだ。進学先を迷っていると「見てみるか?」と助け舟を出され、2人で上京。父の母校である春日部共栄の練習を見学し、衝撃を受けた。「全員がまとまっていた。ここでやりたいなと思いました」と即決した。親元を離れての寮生活はつらかったというが、今は寮長。「普段はあんまり怒らないけど、注意するときはしますよ」と寮生36人を見事にまとめ上げている。

 最後の夏はノーシードから。「勝てば喜んでくれると思う。自分が活躍するのが一番良い」と、見守ってくれた父への恩返しを誓った。【保坂恭子】