<高校野球北北海道大会>◇20日◇準々決勝

 旭川実が9回表2死から旭川龍谷を逆転し、4-3で同地区対決に勝った。北北海道は4強が出そろった。

 “ミラクル旭実”の再現だ。8回裏に逆転を許し、1点ビハインドの9回表2死二、三塁。あと1アウトでゲームセットの場面で、鈴木が中前へ2点適時打を放ち逆転した。打った鈴木、ベンチ、スタンドの応援団が手をたたいて歓喜した。打席に向かう途中、岡本大輔監督(37)は割れたヘルメットと打撃用手袋を掲げた。それを見た鈴木は、無言でうなずいた。「(負傷交代した細坂)一騎とまたフィールドで戦おうとみんなで話していた。死んでも打ってやろうと思いました」と語気を強めた。

 負けられない戦いだった。両チーム無得点で迎えた4回表、先頭で出塁した主将の細坂が二進。4番大保の左前打で一気に生還したが、本塁ベース上でクロスプレーとなり捕手と接触して頭部を痛めた。ヘルメットが割れるほどの衝撃。治療して1度はその裏の守備に就いたが、5回裏守備開始のボール回しの時に倒れ込みそのまま交代。病院へ直行した。岡本監督は「主将が途中交代というアクシデント。戻って来るまでは負けられないと選手に話しました」。大逆転劇に試合後は目頭を熱くした。

 主将とともに戦った。打席に入る前は、細坂のタオルや打撃用手袋を触ってベンチを出た。細坂の代わりに急きょ出場して6回表に安打を放ち、一時は勝ち越し点を呼んだ室井は「担架で運ばれたときにいくなと思いました。一騎もこのままじゃ終われないと思った」。主将を思う強い気持ちが勝利を呼び込んだ。

 鈴木は「自分も副主将という立場なので、投球でも引っ張っていかないと、と思った。今日はみんなで勝ち取った勝利。次もみんなで勝ちたいです」。細坂も旭川市内の病院で精密検査を受け異常はなかった。95年夏の甲子園で8強入りした当時のように、逆転勝利で勢いに乗るチームは22日の準決勝で、春全道準優勝の駒大岩見沢に挑む。【石井克】