<全国高校野球選手権:中京大中京2-1南陽工>◇9日◇1回戦

 中京大中京(愛知)が、逆転で南陽工(山口)を破った。

 夏連覇へ、初戦から漂う重苦しいムードを1番小木曽亮外野手(3年)のバットが振り払った。終盤7回に先制点を許し0-1。この苦境を3年間、大藤敏行監督(48)から小言をもらい続けたやんちゃ坊主が救った。その裏1死二塁から、初球をたたいて左中間を破る同点三塁打。「ボクが断トツ、おこられました」と胸を張る?

 男は勝負強かった。左翼手の返球が乱れる(記録は失策)間にホームを踏み、逆転に成功した。

 打のヒーローは右翼の守備でも見せ場を作った。5回に本塁へ好返球し、二塁走者の生還を阻んだ。今夏で退任する大藤監督と戦う最後の夏。「みんな先生(大藤監督)との夏が1日でも延びるように、と思ってやっているのでうれしい」と言う。手はかかるが、その分かわいい“息子”の恩返しに、同監督も「一番大事なところで一番いいプレーをしてくれた」と喜んだ。

 4季連続の甲子園。中盤までは拙攻続きで苦しんだが焦りはなかった。愛知大会決勝では試合前から硬さが目立ち、球場入りのバスで同監督が「キューティーハニー」をアカペラで熱唱して笑いを取り、選手の緊張を解いたほどだった。この日はそんな気遣いは必要なし。終盤の逆転勝利でたくましさを証明した。

 昨夏全国制覇の立役者、堂林(現広島)のようなスターはいない。だが、しぶとさと勝負強さは現チームが上。磯村主将は「先生も最後だし、去年と同じように一番長い夏を過ごしたい」。王者が史上初2度目の連覇へ、スタートを切った。【八反誠】