<全国高校野球選手権:成田10-2八戸工大一>◇13日◇2回戦

 成田(千葉)の「唐川2世」、エース中川諒投手(3年)が2試合連続2ケタKとなる10奪三振完投で、1952年以来、58年ぶりの甲子園2勝を挙げた。1勝だった本家ロッテ唐川の甲子園勝利数を上回り、2試合合計24奪三振。最速142キロで11安打を浴びたが、要所を締めて2失点で投げ切った。17日予定の3回戦は北大津(滋賀)-前橋商(群馬)の勝者と対戦する。

 中川はほえた後、ぶぜんとした表情で整列に向かった。「最後は真っすぐで決めたかった」と言うように、最後の打者を140キロの真ん中直球で空を切らせて、10個目の三振を奪った。14奪三振の智弁和歌山戦(7日)に続く、2試合連続の2ケタ奪三振にも「全然ダメ。調子が良くなくて、制球が甘くなってしまった」と反省ばかりが口をついた。

 5回、先頭の6番中村に右翼線二塁打を許し、1死後に4連打を浴びた。8番小笠原から1番下畑までは、すべて直球をとらえられた。左打者には、シュート回転して真ん中に入ってくる直球を狙われた。7回には、右ひじに「これまで感じたことのない」(中川)という張りを覚えていた。尾島治信監督(41)が「代えることも頭をよぎった」というほど、調子は良くなかった。

 それでも抑えられたのは「勝負どころでの制球が良かったから」と振り返る。5回、2点を失ってなおも2死二、三塁。「ピンチの方が燃えるので」と、3番佐々木周を外角の139キロ直球で空振り三振に切って取り、同校を58年ぶり「甲子園2勝」に導いた。

 あこがれの先輩を超えた。ロッテ唐川は06、07年のセンバツに出場し、甲子園で計1勝。中川は「まだまだ追いつけない。内容が全然」と納得しないが、勝利の数は超えた。そんなあこがれの存在は12日、右手中指骨折から復帰して勝利した。夜のニュース番組で結果を確認し「やっぱりいいですね。かっこいい」と刺激を受けた。試合前には、唐川が三振を奪う投球映像を見て、気持ちを高ぶらせている。

 6月、梁川啓介部長(35)はネット裏から中川の投球を見て気付いた。「リリースの時にピシュッと音がするようになった。その時は良いボールがくる。唐川は2年のセンバツの時にはしていた」。女房役の近藤は左手親指がけんしょう炎になり、昨秋からミットの網の部分を5回も修理したほどだ。「真っすぐのキレで勝負したい」。中川はあこがれ続けた「本家」を追い求め、腕を振り続ける。【今井恵太】