ロッテにドラフト1位指名された桜美林大・佐々木千隼投手(4年=日野)が、2試合連続の1失点完投で初の明治神宮大会出場を決めた。中央学院大戦に先発し、121球で5安打9奪三振。志願した中1日の先発で、自身初の全国切符をつかんだ。決勝は今日3日に行われる。

 佐々木が、神宮への扉もこじ開けた。今秋リーグ戦でチームを初優勝に導き、初出場の今大会でも2試合連続完投で悲願を達成した。「初めて全国大会で戦えるのは楽しみ。うれしい気持ちでいっぱいです」。マウンドでは表情ひとつ変えなかったイケメン右腕が、さわやかな笑顔を見せた。

 大一番でも、憎らしいほど落ち着いていた。ストライクを先行させ、切れ味抜群のスライダーとシンカーで抑え込む。打者が悠然と見逃すような明らかなボール球は、ほとんどなかった。「自分で投げると言った以上、情けない投球はできなかった」。この日最速148キロを計測した直球も、次々と内外角に決まった。

 マウンドを譲る気はなかった。10月31日の創価大戦は105球で1失点完投。ソフトバンク1位指名の田中正義投手(4年=創価)に投げ勝った。「投げ合いは楽しかったし、球数も多くなかった。疲れもなかったので、次も(先発で)行く気でいた」。翌1日の午前11時ごろ、津野裕幸監督(45)に呼ばれた。「最初は先発じゃないと言われたんです。『えっ?』と思った」。すぐに直訴した。「自分で決めさせてください」。

 首都大学リーグは、基本的に同一カード3連戦は行わない。中1日の先発は「去年1回あったくらい」と、経験はゼロに等しかった。監督は「中1日だし、寒さも心配した。今までは説得していたけど、すごくいい表情で言ってきた。最後は千隼にかけようと思った」。都立高出身者初のドラフト1位、桜美林大初の支配下指名を受けたエースは、また1つ壁を破った。

 夢の全国大会で見せるのは、投球だけではない。指名打者制を採用しない明治神宮大会は、日野高時代に通算33本塁打をマークした男の絶好の機会だ。神宮では2発を放っている。「(公式戦の)打席は久々なので、ちょっと怖い(笑い)。簡単には打てないと思うけど、普段から練習はしている。優勝したいですね」。裏街道を歩んできた佐々木が、大舞台の主役として脚光を浴びる時が来た。【鹿野雄太】