らしい打球が神宮の空に舞い上がった。西武中村剛也内野手(33)が2回に左中間席に運ぶ先制の11号ソロ。長い滞空時間で6戦ぶりに描いた大きな弧が打線爆発の号砲となった。チームは5月12日オリックス戦以来の2ケタ得点で快勝。「風で入ってくれましたけど、いいスイングができた。これを続けるしかない」とうなずいた。

 心の波を必死に抑え、己と向き合ってきた。開幕から17試合連続安打をマークした打撃が5月に入り下降。月間打率は1割台に落ち込んだ。同27日楽天戦前のフリー打撃では珍しくバットをたたきつけた。「とにかく打たないといけないですから」とだけ話したが、打開するには振るしかない。希代のホームランアーチストは分かっていた。

 交流戦初戦から早出練習でロングティーを敢行。「ストレス発散ですよ」としながらもノックバット、マスコットバットを手に、体を大きく使って“飛ばす”感覚を確かめた。「交流戦が得意とかは全くない。普段と違うユニホームと戦うな、くらい。でもこのタイミングで入れるのは(切り替えに)いいかもしれないですね」。

 その言葉通りモヤモヤを払拭(ふっしょく)する1発。通算トップの交流戦本塁打も68本に更新した。前日2日から打順が5番となったが「やることは変わらないので」と意に介さない。仕事は打つこと-。「これをいいきっかけにしないといけない」と力を込めた中村。主砲が復調へ、のろしを上げた。【佐竹実】