心に決めていた初球打ちが、劇的勝利につながった。阪神伊藤隼が貴重な同点打を放った。1点を追う6回裏1死一、二塁に代打で登場。西武十亀の初球シュートをとらえ、右前に運んだ。「積極的にいこうと思った。そういう場面で行かせてもらったので、よかった」。首脳陣の期待を応え、表情は緩んだ。

 今季3度目の1軍昇格。チャンスは存分にあるわけではない。与えられるのは1打席。伊藤隼には、代打の心得がある。どんなことがあっても、絶好球は見逃さない。「何でも手を出すわけじゃないけど」と、前置きをした後に言う。「ある程度はベンチ裏で考えて、スコアラーさんとかにも聞いて、ネクスト(バッターズサークル)では、腹をくくって打席に向かっている」。5月19日ヤクルト戦(神宮)の今季1号も代打で、初球を打ち抜いた。プロ6年目の覚悟が、この日の同点打を生んだ。【真柴健】