楽天藤田一也内野手(34)が歴史に残るスーパープレーを演じた。阪神との交流戦第3戦はまたも接戦。1点リードで迎えた6回裏無死一塁、阪神原口の中前に抜けそうな鋭い打球を藤田はワンバウンドでダイビングキャッチ。飛び込んだ状態のまま、二塁ベースカバーに入った三好にグラブトスし、併殺を完成させた。4回にも失点を防ぐ好守をみせるなど、1-0勝利に大きく貢献した。

 その瞬間、甲子園は感嘆のため息に包まれた。打った原口は天を仰ぎ、併殺を完成させた一塁銀次は右手でガッツポーズ。岸が、嶋が満面の笑みで藤田を三塁側ベンチ前に迎える。ただひとり、藤田だけが何もなかったかのように、淡々とハイタッチを受け続けた。 「相手に流れがいくところをしっかり止めることができました。手が一番伸びたところで捕れて、跳ぶタイミングも良かった」。6回表に岡島の適時打で先制し、その裏の無死一塁。連打になれば、阪神に流れが一気に傾く場面だった。

 原口の打球はライナーでマウンドの右3メートルを襲い、二塁ベース右でワンバウンド。そのまま中前に抜けるかと思われた。その時、藤田が左手を精いっぱいに伸ばしダイビングキャッチ。横たわったまま、二塁ベースカバーの三好の胸あたりにグラブトスし、三好も流れるような動作で一塁転送。原口を楽々アウトにし、併殺を完成させた。

 ここは藤田本人に解説してもらおう。

 藤田 岸は制球がいいから守備にもリズムが生まれやすい。あの時は(原口を)追い込んでからの外のスライダー。このあたりに来るかなという予測はあった。打球をうまく(グラブの)網の部分で捕れたので、手首を使えて、三好が(二塁に)入るタイミングでトスができた。グラブの芯(しん)だったら手首が使えないからね。いろんな条件が重なったからできたプレーだけど、あそこまでうまくいくとはね。

 4回にも中前に抜けたら1点という打球を好捕していた。ゴールデングラブ賞を過去3回受賞した名人は今年の楽天の躍進を間違いなく支えている。「いつも守備で勝利に貢献したいと思っている」。藤田の守備には何物にも代え難い価値がある。【沢田啓太郎】