珍事で調子が狂ったのか、阪神が広島との首位攻防第1ラウンドに大敗した。1回、田中の左翼越えの当たりがフェンスのラバーの切れ目に入り込み、ボールが消えて二塁打になるアクシデントが発生。この回、先発ランディ・メッセンジャー投手(35)は3点を失い、4回まで投げ5失点でKOされた。2番手柳瀬も3本塁打を浴びるなど、金本阪神最多の17被安打13失点。スタメンに復帰した糸井嘉男外野手(35)が適時打を放ったものの、首位広島とのゲーム差を今季最大の「4」に広げられた。

 まるで手品を見せられたようだった。白球が濃緑のラバーの中に消えた。

 0-0の1回裏。先発メッセンジャーが1番田中に初球を痛打される。左翼後方への大飛球に福留がジャンピングキャッチを試みたが、わずかに届かない。そのまま、ボールは姿を消した。1度は本塁打と判定されるも、阪神守備陣が猛抗議。実は左翼フェンス下部のラバーが破れてできた穴に吸い込まれており、リプレー検証の結果、二塁打として試合は再開された。

 球場全体がザワつく中、メッセンジャーは2番菊池のバントを処理しきれず安打にし、3番丸の適時二塁打で先制される。さらに2者連続犠飛で初回から3失点だ。金本監督は試合後、珍現象の影響については「それは分からん」と淡々と振り返ったが、頼みの大黒柱はまさかの4回5失点で降板。2番手柳瀬は1イニングで3被弾するなど被安打6、8失点と大崩れした。終わってみれば金本阪神2年目でワーストの13失点、被安打17。広島3連戦3連勝で首位奪取…という希望は白球とともに消え去る形となった。

 リーグ戦再開ゲームでの大敗は痛い。ただ、必要以上に落ち込んでいる暇はない。打線は3得点ながら11安打。反撃ムードの好機で併殺打が飛び出したり先の塁を狙って右翼鈴木の強肩に惜しくも阻まれたりと、紙一重のプレーに泣いた側面もあった。指揮官は「まあ、これも試合ですよ」と冷静に総括した上で、前向きな要素にも目を向けた。

 左太もも裏を負傷していた糸井が9試合ぶりにスタメン復帰し、いきなりマルチ安打を記録。3回2死一、三塁ではジョンソンの外角低めカーブに我慢し、巧みなバットコントールで中前適時打を決めた。指揮官は「(糸井は)結果的には2本出たんか。そこは上がり目があるとして、プラスに考えましょう。いい風に」と言葉に力を込めた。

 金本監督 考えようによっては接戦で痛い負けをするよりは、あっさりしていい。切り替えも早くできて、個々が反省すべきところは反省して、明日ですね。

 残り2戦。今日も明日も、王者カープに食らいつくだけだ。【佐井陽介】

 ◆野球規則5・05(a)次の場合、打者は走者となる。(7)フェアボール(地面に触れたものでも、地面に触れないものでも)が、フェンス、スコアボード、灌木およびフェンス上のつる草を抜けるか、その下をくぐった場合、フェンスまたはスコアボードの隙間を抜けた場合、あるいはフェンス、スコアボード、灌木およびフェンスのつる草に挟まって止まった場合には、打者、走者ともに2個の進塁権が与えられる。