トンネルを脱した。広島岡田明丈投手(23)が後半戦初先発で7回途中まで2安打1失点。直球勝負で6回までは完全投球。力で6月15日オリックス戦以来の8勝目を手にした。ジョンソンの離脱が発表された日に、前半戦終盤に苦しんだ右腕が復調を印象づけた。

 怒っているようだった。感情を表に出さない岡田が、マウンド上で怒りの表情を貫いた。投じる球は烈火のごとく、うなりを上げた。立ち上がりから直球勝負で6回まで完全投球。大量リードに、表情も気持ちも緩めない。7回途中2安打1失点。6月15日オリックス戦以来の8勝目を手中に、2死満塁でマウンドを降りる背番号17に大きな拍手が注がれたが、岡田に笑みはなかった。

 「自分にとっては大事な試合だった。反省する部分もありますが、6回まではしっかり仕事ができたと思う」

 全102球中8割に迫る79球が直球で、39球が150キロを超えた。力で中日打線を抑え込んだ。最後まで150キロを計測。「いい感じで、自分のペースで投げられた。こういう投球を続けていきたい」。持ち味である力強い直球、そして強気な気持ちを取り戻した。

 前半戦7勝も、2軍降格の危機にあった。交流戦明けから勝ち星なく、2連敗。「悩んだというか、考え過ぎていた」。前半戦最後の登板7月11日DeNA戦は6回途中10安打5失点と修正ができなくなっていた。だが、初の球宴が転機となった。全球直球勝負で挑み2回無安打無失点。きっかけをつかんだ。

 この日は前半戦まで打率3分7厘の打撃でも貢献した。3回は無死二塁からスリーバントを決めて、先制点につなげた。4回1死満塁からは初球を右前へプロ初打点で追加点をもぎとり、5回には初長打となる2点二塁打。苦手な打撃も昨季から1人球場内で打撃練習を行ってきた。技術向上だけでなく「少しでも相手が嫌だと思えば」と米大リーグの打者を参考に構えを変えた。

 後半戦は2軍で調整する可能性もあった岡田が、投打に意地を見せた。緒方監督も「岡田の日やったね、今日は」と手放しでたたえた。大黒柱ジョンソンの離脱が発表された日に、悩める右腕が不調のトンネルから抜け出した。【前原淳】