西武栗山は表情を崩すことなくダイヤモンドを1周した。「どうやってかっこつけようかなと…。テーマは無表情。緩まないように固めてました」。9回2死一、二塁で代打で登場。4球目の152キロを振り抜き、プロ2本目のサヨナラアーチを左翼席に運んだ。

 15日の楽天戦から代打待機が続いた。それでも準備は変わらなかった。「だんだん、体を温めるまで時間が必要になってきてるんですよ」。33歳。黙々と走りこんでから、試合前の打撃練習に入る。出番がいつ来るか分からなくても、やるべきことは同じ。だからこそ土壇場でも「サヨナラとか余計なことは考えず、ボールだけに集中」することができた。

 勢いに乗るチーム。「優勝、あると思います」と言い切る。根拠は2010年シーズン。3・5ゲーム差で首位を走りながら、ソフトバンクにひっくり返された。「(マジック)4までいったのに優勝出来なかった。その経験をしてるからまだまだ可能性があると思ってます」。苦い経験を味わった男だからこその言葉だった。

 菊池の力投に応えた会心の一打。「ああいう姿を見たら、みんな点を取ったろうって気持ちになる。雄星の姿があってこその一打です」。この男のバットは、やはりかっこいい。【佐竹実】

 ▼西武が代打栗山の本塁打でサヨナラ勝ちし、先発の菊池は今季3度目の完封で12勝目。サヨナラ勝ちで完封勝利は12年8月26日田中(楽天)以来となり、西武では09年8月22日岸がロッテ戦で記録して以来、8年ぶり。今回のようにサヨナラ本塁打で完封勝利の西武投手は、88年7月5日ロッテ戦で清原のサヨナラ本塁打で1-0完封した森山以来、29年ぶりだ。これで菊池は防御率、勝利、奪三振がトップ。パ・リーグでこの3部門が1位は06年斉藤和(ソフトバンク)が最後。西武では西鉄時代の61年稲尾以来の記録に挑戦する。