粘りが実った。阪神北條史也内野手(23)が執念の打撃でサヨナラ機を演出した。同点の9回1死一、二塁で根負けすることなく、粘って、左前打。直後の福留のサヨナラ中犠飛につなげた。1点を追う3回には同点打も放っており2安打1打点。大和が負傷離脱した中で巡ってきたチャンスを生かした。

 北條は揺らしたバットをスムーズに出した。サヨナラ劇を演出したのは、今季不振にあえいだ背番号2だった。同点の9回。目前で西岡が勝負を避けられ、燃えた。1死一、二塁で打席へ。「チャンスだったし、なんとかしようという気持ちだけでした」。6球ファウルで粘った10球目。どんな球にも食らいつく姿勢で、低めに来た138キロのフォークに反応した。体勢を崩されながら、左前に運び、満塁。福留のサヨナラ犠飛につなげた。

 前日16日に遊撃のポジションをつかみかけていた大和が右脇腹を負傷。この日、出場選手登録を抹消された。巡ってきたチャンスで、取り逃がすわけにはいかない。「僕はチャンスと思ってやるしかない。今まで全然ダメだったから、巻き返す気持ちでいきます」。金本監督も「今年の開幕スタメンを高山、北條、原口でいって、誰もスタメンにいなくなった。悔しい気持ちは持ってくれていると思うが、気持ちが空回りしているところがあった。北條は今年スタメンがほとんどない状況で、ケガで巡ってきたチャンスだが、これを生かしてほしい」と“逆襲”に期待を寄せた。

 過去の栄光にすがることなく、いつも前だけを見てきた。高校3年の夏、光星学院の4番打者として甲子園凖V。1大会4本塁打を放ったときの記念球にも未練はなかった。「どこにあるか、わからない。知らない」。今回も目の前のチャンスをつかもうと必死だ。9回の一打だけでなく、3回の同点打も低めの球に食らいついてのもの。いずれにも執念が詰まっていた。糸原が、そして大和も負傷離脱。遊撃のポジションをモノにするには、今しかない。【真柴健】