巨人が球団史上初めて、クライマックスシリーズ(CS)の舞台に立つことなく、姿を消した。阪神戦に敗れ、3位DeNAが勝利したため、11年ぶりのBクラスとなる4位が確定。07年のCS導入以来、12球団唯一となる10年連続CS出場中だったが、11年目にして出場を逃した。前半戦の球団史上ワーストの13連敗から巻き返しを図ったが、142戦目にして力尽きた。

 高橋監督は覚悟を決めたようにマウンドで語った。「大きな期待を感じながら今季をスタートしました。しかし、前半戦の苦しい戦いがありました。後半戦に入り、選手の頑張りで何とかCS争いをすることができたが、ここにある今の現実をしっかり受け止めて前に進んでいきたい」。本拠地最終戦でのファンへのあいさつ。その時点ではDeNA戦は終了しておらず、順位も未確定だった。現実を直視した指揮官に約30分後、球団史上初のCS進出を逃す悲報がもたらされた。

 打てなかった。阿部は「それに尽きる。9月(チーム打率2割3分3厘)が良くなかったから、こういう結果になった」と認めた。ここ数年の課題は今年も消化できなかった。チーム打率、得点は昨季と、ほぼ横ばい。本塁打は約20本も減った。新外国人マギーは首位打者を争ったが、FA加入の陽岱鋼は終盤に不振に陥った。阿部、村田、長野ら主軸も年輪を1つ刻んだ。力が落ちていくことは避けられない。だが野手陣に新しい息吹は感じられなかった。フル回転したベテランは終盤にガス欠した。

 高橋監督は「(若手の台頭不足は)現状、難しいところ。投手はいい結果を出し始めている。野手は結果を残せたり、残せなかったりですね」と挙げた。田口の成長、畠のブレークで昨季から数字を伸ばした投手陣とは対照的だった。岡本ら才能と期待する打者は埋もれたままだ。

 乗り切れなかった。5~6月に球団ワーストの13連敗を喫した。13連敗以上したチームでAクラス入りした歴史はない。奇跡を起こすべく、GMを交代し、マギーを2番に据えた。だが巻き返しの最中でFA加入の山口俊が不祥事を起こすなど、計算していた戦力も失った。13連敗を抜け、48勝35敗3分けと好転させたが、歴史的反攻の成就には至らなかった。「そこが変わることはありませんからね。(後半に)少し挽回できた部分があるのも事実だと思うが」と今季の分岐点を振り返った。

 名門は過渡期を迎えている。3年連続、高橋監督は就任から2年連続で優勝を逃した。正式決定はまだだが3年契約の最終年となる来季に真価が問われる。指揮官は帰り際にBクラスに「現実を受け止める」と締めた。今と向き合わなければ、巨人に栄光は戻ってこない。【広重竜太郎】

 ▼巨人の4位が決定。巨人の4位以下は06年以来で、07年から始まったCS出場を初めて逃した。巨人のBクラスは1リーグ時代の47年を含め9度目だが、勝ち越しのBクラスは62、91年に次いで3度目になる。

 ▼あと1試合残している巨人だが、現時点ではリーグ最少の498失点で、チーム防御率3・30はリーグ1位。セ・リーグで防御率1位チームのBクラスは73年ヤクルト(4位)以来2度目となり、最少失点チームのBクラスも01年中日(5位)以来2度目。防御率1位の最少失点チームがBクラスはセ・リーグ史上初めてだ。

 本塁打、盗塁、犠打が減り、併殺打を球団史上ワーストの129本記録するなど、攻撃が課題だったが、接戦に弱かったのも敗因。上位3チームがすべて1点差試合を勝ち越したのに対し、巨人の1点差試合は13勝27敗、勝率3割2分5厘。0-1が6試合、1-2が4試合、2-3が6試合と、投手が3失点以下に抑えながら1点差で敗れたのが16試合もあった。