いつもあの言葉が胸に残っていた。174センチ、66キロ。DeNA大原慎司投手(32)の決して大きいとは言えない体の内に、秘めていた言葉がある。「『1球1球、信念を持て』。当たり前のような言葉だけど、ずっと心の中にあった言葉。きつい場面のときこそ、このことを心がけていた」。17年は1軍登板がなかったが、2軍での登板でも、その信念がぶれることはなかった。

 明秀学園日立高では甲子園出場はなく、常磐大、TDKと進みプロ入り。10年ドラフト5位で入団。入れ替わるように引退した木塚2軍投手コーチ(現1軍投手コーチ)に言われた言葉だった。「先発、中継ぎが投げて、野手が点を取って勝っている7回、8回、なんとなく投げた1球が、チームのマイナスになって負ける。どれだけの人が影響されると思う? 本当にしんどいときこそ、1球1球、信念を持て。そう言い聞かせろ」。変則フォームのリリーバーと共通点も多く、年間76試合登板の球団記録を持つ木塚コーチに言われたから、なおさら胸に響いた。

 細身ながらキレのあるスライダーを武器に投げるスタイル。大原はルーキーイヤーの11年に71試合登板。14年途中まで、プロ野球史上歴代3位タイとなる169試合連続無敗記録を達成した。マウンドでは、いつも信念を貫いた。15年に左肩を痛め「100%納得のいくところではなくなっていた。体、肩をひっくるめて次の道に挑戦しようと決めた」。7年間の現役に別れを告げ引退を決断した。

 球団から職員のポストを用意され、今は野球振興部に所属。野球教室を中心に活動を行っている。「ベイスターズをきっかけに野球選手になったり、野球を始めたりして、貢献していきたい」。ユニホームを脱いでも、大原の信念は変わらない。【DeNA担当 栗田成芳】