「連敗ストップ男」の夢は続く。東京6大学リーグ各校の4年生進路がほぼ出そろった。15年春に東大の連敗を94で止めた柴田叡宙投手(4年=洛星)は社会人の強豪・JR東日本入りする。明大・高山俊外野手(24=阪神)らプロ入りした強打者たちに打たれた悔しさを胸に、次のステップへ進む。

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 あの景色が、野球を続けさせてくれた。15年春の法大1回戦。2点リードで迎えた延長10回裏を柴田が抑えた。負けしか知らなかったナインたちがマウンドに駆け寄ってきた。歓喜に沸くスタンドは東大カラーの青一色になった。「野球を続けてきてこんな瞬間はなかった。今まで生きてきて一番うれしいぐらいの感じだった」。東大1694日ぶりの美酒だった。

 ドラフトで日本ハムに7位指名された宮台康平投手(22)が、1点リードで救援したが7回裏に打たれ2-4になった。柴田が次の回からの登板を命じられると、8回表に味方が同点にした。エースの宮台が打たれた後を必死で投げ抜き、3回無失点で初勝利を挙げた。「勝利の瞬間にマウンドにいられて、もっとそういう場面を経験したいと思った」。卒業後も野球を続けたいと強く思った。

 同年秋の悔しい経験も糧になった。明大4年だった高山(阪神)に、リーグ新記録の128安打目を許した。「失投ではなかったのに三塁打にされて、びっくりした。あの代はすごかった」。楽天入りした茂木栄五郎、巨人の重信慎之介、日本ハムの横尾俊建にも本塁打を打たれた。こてんぱんにされ、“記録男”になったことでレベルアップの必要性を痛感できた。

 15年ぶりに勝ち点を挙げた今秋の法大2回戦は、出場できなかった。投球フォームの変更がしっくり来ず、調子が戻らなかった。「勝ち点が取れてうれしかったけど、投げられない悔しさが残った。JR東日本で何とか成長して、勝つか負けるかの試合で出してもらえるよう、必要な戦力になりたい」。柴田にとって4年間唯一の勝利は未来を見せてくれた。【和田美保】