打つだけじゃない。足でも魅せる。広島堂林翔太内野手(26)が15日、マツダスタジアムでの全体練習に参加した。ここまでオープン戦チームトップの3盗塁。「足は速くない」と認めるが、担当コーチも太鼓判を押す非凡なセンスと技術で成功率100%を誇っている。打撃のほか、走塁面でも開幕1軍を強くアピールしていく。

 生き残りへ、なりふり構っていられない。堂林は出せるものすべてを出し、首脳陣にアピールし続ける。打撃は当然ながら、走塁に対するこだわりも強くなってきたと明かす。

 「このまま(1軍に)残るためにも、打つだけになると…。他の選手と比べられた時に、打つのと走るのと両方できた方が、1歩リードできる。走れると思ったら走りたい」

 外野の一角を狙う一方で、代打や代走枠としての開幕1軍入りも視野に入れる。過去4年間、1軍では計5盗塁にとどまった。だが今季のオープン戦はここまで3盗塁。11日のヤクルト戦(福山)では左腕寺島からも二盗に成功した。 俊足ではない。「足は速くない」と堂林も言い、50メートル走で6秒を切ることはないという。それでも盗塁できる理由が主に2つ。玉木内野守備走塁コーチが説明した。「観察眼ですね。タイミングよく、思い切っていける」。走らせまいとする投手との駆け引きを制し、いいスタートが切れる可能性が高いという。

 次にスライディングだ。「堂林は左足を前に出して滑るんです」と同コーチ。多くの選手は内野手のタッチから少しでも遠ざかるため、右足を前に出す。だがこれはベース周辺で蛇行や大回りが生じやすい。堂林の逆足は「真っすぐ走って真っすぐスライディングできる」(同コーチ)という利点があり、塁間タイム短縮を生んでいる。

 「一昨年くらいから、2軍でも盗塁の意識をかなり持つようになった。このキャンプからスライディングのスピードも出てきた」と堂林。2年前に2軍で15盗塁したように、足のポテンシャルは元来高い。

 昨季盗塁王の田中を筆頭に、チームは主力に走れる選手が多い。野間や上本ら足技にたけた選手も控える。今日16日のヤクルト戦(神宮)を含め、開幕までオープン戦8試合。堂林は走攻守に磨きをかけ、残された多くないチャンスで存在感を示す。【大池和幸】