さすが千両役者だ。米メッツから7年ぶりにヤクルトに復帰した青木宣親外野手(36)が、復帰後初安打初打点で開幕戦勝利を決定づけた。5-1の8回2死一、二塁、フルカウントからの8球目。DeNA国吉の真ん中高めの失投を逃さなかった。短く持ったバットで左翼へ。復帰後初安打が貴重な追加点を生み「あそこで1本って気持ちでした。ダメ押し点がほしかったところなので良かったです」と、ほほ笑んだ。

 日本で首位打者3度の「安打製造機」が6年間のメジャー舞台で磨いてきたのは打撃技術だけではない。復帰直後、昨季96敗を喫したチームについて「メンタルがやられますよね。あれだけ負けるとマイナスイメージしか湧かないというか、なかなか立ち直れないと思う」と仲間たちの精神面の影響を気に掛けた。

 戦う集団になろう-。背中と言葉で引っ張った。6日の中日とのオープン戦では、4回で0-7となった後にベンチ内で選手を集めた。「シーズンではこういうこともある。諦めずいこう」と呼びかけ、9回に3点差まで迫った。開幕前日のミーティングでも自ら発言を求めた。「長いシーズン、良い時も悪い時もある。そんなとき『must(~しないといけない)』じゃなくて『can(~できる)』の精神でやっていこう。俺たちはできるんだと思って」。熱いメッセージで、昨季に屈辱的な1年を過ごしたチームの闘争本能をたぎらせた。小川監督も「人間的にも考え方も大きく成長した。選手たちには大きな存在」とうなずいた。

 だからこそ、チームは完全アウェーの敵地でもひるまなかった。初回無死一塁、初球に二盗を決めた山田哲がつけた勢いを全員で加速させた。攻めの姿勢を貫いた末の開幕戦白星にも、青木は「とにかく1つ勝つのが大事。そうしないと2つ目はない。そういうつもりで戦っていきたい」と浮かれずに締めた。帰ってきた青木を先導役としたヤクルトの、逆襲のシーズンが幕を開けた。【浜本卓也】