巨人田口はあの夏のリベンジを果たせず、ぐっと唇をかんだ。1点リードの6回1死一、三塁。小谷野を2ストライクと追い込んだ。だが、内角低めへの決め球スライダーにうまく合わせられ、同点適時打。「大事な場面で甘さ、弱さが出てしまった」。右前へ落ちた打球を目視すると、悔しさをにじませた。山岡は6回を完了したが、2人及ばず5回1/3で降板した。

 分岐点と認める、5年前の記憶は鮮明に残っている。13年夏の広島大会決勝。広島新庄の田口は、瀬戸内の山岡と再試合を含め、2試合投げ合った。「点が取れなくて苦しかった。でもすごく楽しかった」。計24回を戦い抜き、0-1で敗れた。「最高のピッチャーと同じマウンドで投げ合うことは幸せでした」。運命のように、再び火花を散らした。

 序盤から飛ばした。最速142キロの直球とスライダーを低く、隅に集めた。5回1死まで無安打投球。T-岡田に中前打で初安打を許し、大城に左前打で一、二塁とされたが、後続を抑えた。右腕の存在は「少なからず頭にはあった。負けないように、強い意思を持ってマウンドに上がれた」。両者とも1失点。内容は“引き分け”だった。

 試合は作った。だが、5月5日DeNA戦以来、自身4試合ぶりの白星はつかめなかった。「状態が良くても結果が出ないとダメ。勝てる投手にならないと」。5年前の自分へ言い聞かせるように、己を戒めた。【桑原幹久】