ベテラン陣の力投がミラクル勝利を呼び込んだ。阪神能見篤史投手(39)が「日本生命セ・パ交流戦」で、8年ぶりの救援登板白星を挙げた。今季最多4万6723人を集めたロッテ戦。延長11回から2イニングを投げ、無失点。今季1勝目で通算99勝目となった。延長10回2死満塁で登板した藤川も踏ん張った。そんな奮闘が延長12回の敵失によるサヨナラ勝利につながり、チームは交流戦初連勝。雨天中止次戦の全勝も継続し、借金1と完済も目前や。

 やり直しの出来ない1球に能見は集中していた。2-2の延長12回2死二塁。ピンチで自分に言い聞かせた。「高めにいかないように。あとは自信を持って投げることだけ」。カウント1-2からの5球目。キレが増した外角低めの直球で、中村を中飛に打ち取った。

 勝ちパターンを総動員した延長戦。11回を3者凡退に抑えると、経験に勝敗を託された。中継ぎ転向2試合目で今季初のイニングまたぎ。救援で1試合複数回を投げるのは3年ぶりだ。「1人1人が勝負になってくる。先発とは違う」。難しさも感じながら「冷静になって、しっかり腕を振っていくことが大事」と考えた。2回無安打無失点。1球への集中力が、勝利をたぐり寄せることになった。延長12回裏、敵失によるサヨナラ勝利。ミラクルを呼び込み、今季初勝利をマーク。通算99勝とし、大台に王手をかけた。

 プロ14年目。やり直せないことがあることは身をもって知っている。キャンプ、登板までの調整、試合直前。いずれのブルペンでも、能見は“おかわり”をしない。納得いくまで「もう一丁」と腕を振る投手を横目に「ラスト1球」と宣言すれば必ず終わる。年齢を重ねて決めた、自分のルールだ。「試合でおかわりは出来ないでしょ? そういう意味も込めて。ラストを決めるのが大事だし、それが自分の技術。そこを決めるためにやっている」。チーム唯一のおかわり禁止は、試合を想定した行動の一端だ。悔やまれる1球が「いっぱいある。打たれる怖さも知っている」からこそ「そういうところから徐々に変わっていた」という。

 研ぎ澄ませた1球で抑え、通算100勝まであと1勝。それでも「本当は先発につくのが一番いいので」と素っ気ない。先発陣の勝利、チームの勝利が最優先だ。金本監督も「本当に1枚、大きなリリーフが入ってきた」という存在感。チームも雨天中止翌日の試合で7戦7勝とし、交流戦初連勝で借金を1まで減らした。年齢の数だけ積み重ねて来た経験がある。能見が控えるブルペンは、さらに厚みを増した。【池本泰尚】