日本ハム上沢直之投手(24)が、収穫満載の球宴初登板を飾った。

 6回、最初の打者は坂本勇。「今シーズン一番、緊張しました」。シーズンさながらに直球にカーブ、フォークを交え、危なげなく3人を打ち取った。7回も、先頭の山田哲に右前打は許したが鈴木、バレンティン、宮崎を封じ、2回を1安打無失点。緊迫したマウンドを降りると、三塁側席で手を振る妻を見つけ充実感を分かち合った。

 大谷が抜けた今季は、前半戦3度の完封勝利を含め、自己最多タイの8勝。不振の有原に代わり、ローテの軸となった「新エース」の名に恥じぬ躍動をみせた。ロッテのエース石川から評価された、球速は140キロ後半ながら、回転数が多い直球を軸にした。プロ5年目で踏んだ初めての舞台で「意外と真っすぐで勝負できた」と、納得の投球だった。

 さらなる進化への探求心は深い。石川からは握り方が違うカットボールを教わり「1回、練習してみようかな」。10連勝中のロッテ・ボルシンガーには、ナックルカーブを伝授された。「そんなのいらないでしょ!」と“敬遠”されたが、しっかり教えを請うた。既にチームメートのロドリゲスから習得済みも「人さし指の抜き方とか違った」。一線級がそろう球宴でしかできない経験ばかりだった。

 うれしい言葉ももらった。第1戦では、知人を通じて食事したことがある中日松坂から「今年、すごいね」と褒めてもらい、力をもらった。後半戦は20日ソフトバンク戦(札幌ドーム)に先発予定。一流選手にもらった成長へのヒントを、自己新9勝目で証明する。【田中彩友美】