阪神上本博紀内野手(32)が14日、左膝手術後の悩める胸中を明かした上で、今季初取得見込みの国内FA権について初めて口を開いた。現在は仲間に対して「本当に申し訳ない」と日々苦悩しながら、鳴尾浜で地道にリハビリを続けている状況。FA権についても「今は考える余裕はない」と話し、黙々とリハビリに全力を注いでいく。

 テレビをつければ、仲間が懸命に戦っている。この2カ月間多くを語らずにいた上本は今、無力感にさいなまれながら日々リハビリにいそしんでいる。

 「今でも、とにかく悔しい。チームが頑張っている時に自分は一体何をやっているんだろう、と。大事な時期に力になれていないのは紛れもない事実なので、本当に申し訳なくて…。早く戻れるように、今はとにかくリハビリを地道に頑張るしかないんですけどね」

 5月5日の中日戦で二盗した際に患部を負傷。6月15日に球団から「左膝前十字靱帯(じんたい)の再建術」を受けて退院したことが発表された。十字靱帯手術からの実戦復帰は過去の例を見ても、10カ月前後はかかると予想される。現実的に考えれば、今季中の戦列復帰は絶望的な状況だ。現在は鳴尾浜の球団施設内で上半身のトレーニングなどを継続。「今は焦る気持ちを抑えるしかない」。8月中に軽いランニングをスタートさせ、1日も早い復帰を目指す。

 一方で、今季で国内FA権を初取得できる見込みにもなっている。5月6日に出場選手登録を抹消された時点ではまだFA権取得まで日数が足りていなかったが、たとえ今季中に復帰できなくても故障者特例措置を使えば取得日数をクリアできる。球団はすでに慰留に努める方針を固めており、シーズン中にも残留交渉をスタートさせる。ただ、上本は周囲の注目をまったく気にしてはいない。

 「今は正直、FAのことを考える余裕はないんです。毎日しっかり悔いのないリハビリを続けて、シーズンが終わってからゆっくり考えればいい話だと思っているので」

 地に足をつけて、静かにリハビリを続けていく。【佐井陽介】

 ◆今季の上本 開幕2戦目3月31日の巨人戦に、二塁で今季初のスタメンで出場し、いきなりの猛打賞をマークした。4月22日巨人戦(甲子園)から1番二塁に固定されて6試合連続安打。ケガで離脱した5月5日の中日戦直前まで、3戦連続の猛打賞と絶好調だった。今季は20試合に出場して打率4割2分2厘。チームにとって、離脱は大きな痛手となった。