広島菊池涼介内野手(28)が1回に先制&決勝の9号2ランを放ち、4連勝を導いた。打率が2割台中盤を推移するなど打撃は本調子でないが、パンチ力を秘めたつなぎ役として強力打線を支えている。この日は3年連続2桁本塁打に王手をかける1発で勝利に貢献。チームの貯金を今季最多の16まで膨らませて2位巨人とも今季最大の9ゲーム差に広げ、独走態勢に入った。

 三塁コーチのサインに目をやり、打席に入った菊池が獲物を捉えた。プレーボール間もない1回無死一塁。バントの構えを見せることなく、阪神先発岩田の2球目真っすぐを強振した。打球は深い左中間席に飛び込む先制9号2ラン。岩田の出ばなをくじくとともに、甲子園を黄色に染めた虎党を黙らせた。

 6月28日巨人戦(マツダスタジアム)以来の豪快な1発が決勝弾となった。それでも、試合後の表情はさえない。「事故です、事故。たまたまです。あれだけなのでね」。3回の2打席目は同じ無死一塁で2球バントを失敗し、最後は空振り三振。その後も3打席凡退に終わった。

 1回の場面。無死一塁で作戦はいろいろ考えられた。ベンチからの指示は強行だった。「サイン通りなので。僕はいつもサインに従うだけ」。多くを求められるからこそ難しい。それでも開幕から2番として全試合出場し、ベンチからのサインに対応。器用にこなす。リーグトップの16犠打を記録するなど、2番としての献身性が強力打線を支えている。自分を抑えながらチーム打撃に徹するが、迎打撃コーチは「あれも彼の持ち味」と3年連続2桁本塁打に王手をかけたパワーも認める。

 立っているだけで全身から汗がジワリと出るほど蒸し暑い甲子園でも、菊池の頭はクールだった。普段から冷房は極力付けずに扇風機で暑さをしのぐ。甲子園の黒土のグラウンドを苦にしないのは名手というだけが理由ではない。「人工芝で暑い日の方が足はしんどい。甲子園も暑いけど、そんなやわじゃない」。暑さなど気にならなかった。

 緒方監督は「キクの先制パンチが効いたね」とたたえた。名脇役の主役級の働きで、広島は4連勝で貯金は今季最多の16。2位巨人とのゲーム差を9に広げていよいよ独走態勢だ。最短28日にもマジック点灯だ。【前原淳】