キッチリとひっくり返した。西武が楽天にサヨナラ勝ちし、今カードを連勝した。2点を追う9回1死二、三塁で、秋山翔吾外野手(30)が同点2点適時打。なお2死二塁で、山川穂高内野手(26)が右中間を破るサヨナラ打を放った。主力がキッチリ仕事を果たし、今季7度目のサヨナラ勝ち。2位ソフトバンクとの6差を守り、10年ぶりリーグ優勝に向けてひた走る。
ウオーターシャワー用のタンクを促しながら、栗山はグラウンドに駆けだした。今季7回目の歓喜の輪。殊勲打の山川を、満面の笑みとハイタッチでたたえた。「今年は2点差、3点差をワンチャンスで何度もひっくり返してきた。いけると思って声を張ってました」と力強くうなずいた。
この男のバットが、サヨナラ劇への序章となった。2点を追う9回1死走者なしで代打で登場。頭は冷静に、心は熱く、打席に向かった。「2点差だったので、まず塁に出る。代打なんで打てる球は思い切っていく」。カウント2-2から甘く入った145キロを逃さず振り抜き、右越えの二塁打。打線に点火し、秋山の同点打、山川のサヨナラ打につながった。
何が何でも優勝したい。プロ17年目。期するものがある。7月中旬。入団1、2年目の日記を何げなく読み返した。打撃の課題などが書き連ねられたノートをめくりながら実感したのは、時間の経過だった。
栗山 プロの世界に入って、こんなにたっているんだなと。これだけ時間がたっているなら優勝せなあかん。優勝争いをしている今の状況を、面白いと思わないと損なんですよ。
勝つために打席に立ち、悔しい思いも重ねてきた。「自分の成績だけに目がいってしまうと、正直しんどい部分もある」とこぼしたこともあった。前カードのソフトバンク戦で3タテを食らった後は、2010年が脳裏をよぎった。優勝目前の9月中旬に福岡で3連敗を喫してV逸した苦い記憶。それでも「今年はあと1カ月ある。目の前の試合に集中すればいい」と悔しさを糧に、前だけを見据えた。
最短で9月2日にマジック19がともる。栗山は力を込めて言った。「全員が1つになって戦って、1つ1つ勝っていくだけです」。こんな骨太な男が支えるから、今の西武は強い。【佐竹実】