大山、覚醒! 阪神がキャプテン福留孝介外野手(41)欠場の大ピンチで踏ん張り、先発野手全員安打で中日に快勝した。試合を決めたのは、福留に代わって3番に入った大山悠輔内野手(23)。リードを2点に広げた直後の4回1死一、二塁で、左翼席に6号3ランをたたき込んだ。前日11日にはプロ初の2本塁打。2戦3発、ここ5戦で4発という大暴れで甲子園の虎党を沸かせた。

豪快に放物線を描いた。大山が内角に来たスライダーを思い切りひっぱたく。細かく降り出した雨も、左から右に吹く逆風も切り裂いた。

2点リードの4回1死一、二塁。カウント2-2からの5球目を強振。白球を左翼席に突き刺さした。6号3ランはプロ入り初の2戦連弾。前日11日にもプロ入り初の1試合2本塁打をぶち込んだばかり。2戦で3発、ここ5戦で4発の固め打ちは覚醒の証しだ。

「追い込まれていたのでコンパクトにスイングしようと。自分の形で、しっかりと捉えることができた。チームが勝てたのが全てなのでよかったです」

金本監督は大山覚醒に「まだ早すぎでしょう」と話しながらも、「でも本人はそう思っていいんじゃない? いい意味で勘違いをしてほしい。自分を乗せていく、というか。どんどん暗示をかけるぐらいで僕はいいと思う」と期待を込めた。さらに今春キャンプを思い返し、「いい時の状態に戻っている。今年はずっと打ててなかったんですけど、9月に入ってから活発に打ってくれている(打率4割3分8厘)。失敗を恐れずやってほしい」と背中を押した。

チームを襲った思わぬアクシデントも、若武者がカバーしてみせた。主将の福留が前日11日、一塁に駆け込んだ際に右足を負傷して途中交代した。球団は「右太ももの張り」と説明。この日はベンチ入りしたがバットを握ることはなかった。そんな窮地に代役3番で結果を残し、和製大砲誕生の予感を漂わせた。

持ち味は積極性だが、2年目の今季は状況を考えた打撃を意識して「思い切りのよさ」が影を潜めた。壁を突き破るために取り組んだのは“壁ドン”。脇を締め、インパクトを強くするために、球場の柔らかいラバー近くに立ってグリップエンドを「ドン」とぶつける。「結果に対して貪欲になって、修正していきたい」。フォームを確認してきた成果が出た。

お立ち台では「すごくいい状態で来てる。もっともっと打てるように頑張ります!」と逆襲を誓った。3位巨人とは1・5ゲーム差に迫った。シーズン終盤は総力戦。それぞれがキャプテンの穴を埋めて、勝負の秋を突き進む。【真柴健】