ソフトバンクの「最強9番打者」が目の前での西武胴上げを阻止した。この日、09年9月22日ロッテ戦以来、9年ぶりに9番で起用された松田宣浩内野手(35)が4回に逆転29号2ラン、7回にも2打席連続となる30号ソロを放ち、1人でチームの全得点をたたき出した。対西武、メットライフドームでの連敗は5でストップ。CSでの再戦へ向け意地を見せた。

逆転2ランにも、松田宣は今季初めて「熱男」パフォーマンスをやらなかった。1点先制された直後の4回、今季5打数無安打4三振と抑え込まれていた今井のスライダーを左翼席へ。盛り上がるナインとハイタッチした後、通常なら外野に向かって右の拳を高々と上げるが、ここではそのままベンチへと下がった。

松田宣は「悔しくない人はいない」と9年ぶりの9番降格に素直な感情を見せた。藤本打撃コーチが試合前「危機感を与えるための9番。もう落ちるところはない」と説明した通り、9月は打率1割台、3試合無安打が続き、崖っぷちだった。3回の第1打席では右翼席の鷹党から「気合を入れろ松田!」「根性見せろ松田!」とコールされた中で遊ゴロ。自分に悔しくて仕方がなかった。これまで、どんなに点差を離された場面でもやっていた「熱男」をやらなかった。試合後は「特に理由はない」と本心は明かさなかった。

だが、7回の30号ソロの後は、15年の35本以来3年ぶりの30号を達成した喜びからか、いつもより長めの「熱男」を披露し、ファンを喜ばせた。9番起用を決めた工藤監督は「よく打ってくれた。楽なところでいいところを出してもらえればと。この感じがつかめたら通常のままでいい」と、今日30日ロッテ戦からは、再び7番に戻すつもりだ。

工藤監督は「本来は3つ勝つつもりだった。3連戦トータルでは悔しい」と、西武のマジックを1としてしまった連敗を悔やんだ。松田宣もこの3連戦は気合十分だった。前日28日、1軍に合流した3年目川瀬が宿舎出発の際に入り口に立ってナインにあいさつをしていたが、大一番へ向け集中していた松田宣は気づかずバスへ乗り込んだ。その集中力にこの日は9番降格の刺激が加わり今季4度目の1試合2発となった。工藤監督は「こっちが負けて西武の優勝をさせないように。まだ決まってはいないが、CS(第1ステージ)に勝って、またここに来たい」と、CSファイナルステージでのリベンジを誓った。【石橋隆雄】