ニッカンの読者のみなさま、こんにちは。山田です。わたしは今、ハワイにいます。こちらはホワイトクリスマスとはいきませんが、ワイキキでパレードが開催されるなど、派手ににぎわいます。2018年最終テーマは、二刀流の「大谷論」です。

エンゼルスでプレーした大谷翔平は、まさに国民的ヒーローでした。打った、投げたって、これだけ騒いだのは、だれ以来でしょうか。イチローだって、スポーツニュースでは取り上げられたが、ワイドショーにまで追い掛けられることはなかった。好感度NO・1でしたな。

正直、あそこまで二刀流で好結果を残すとは思っていませんでした。投手出身の立場で言わせてもらうと、トレーニングから心身の管理など、ピッチャーの調整は非常に繊細なものです。打者との両刀遣いなんて、とても難しいと思っていました。

今までも、大谷級で、投打にすごい選手はいました。例えば、江川卓(元巨人)は、体格も立派、バッティングも良く、足も速かった。素材としては二刀流もやれたでしょう。でも、わたしもそうだが、はなからそういう発想がなかった。

今までの野球人が考えもつかない、だれも進んだことのない、彼にしかわからない、未知の世界…。そこを切り開き、歩き続ける。その姿に拍手を送ったのです。最初はちょっと待てよと思ったわたしも、すっかり応援団になった気分でした。

1年前、この「サンデー球論」で、メジャーで成功するポイントとして、もう1つ球種をマスターすることの必要性を説きました。もともとコントロールのいいタイプじゃない。球速160キロを計測するようなストレートに、140キロのフォークの連投、その繰り返しではいかにも負担がかかると思いました。

米大リーグ1年目を終えた大谷は今年10月、右肘靱帯(じんたい)再建手術を受けた。慣れたといっても、違った環境、感覚も負担になったはずです。大谷は、メジャーで200勝男のバーランダー(アストロズ)のようなタイプです。メジャーを代表する彼だって、剛球も投げるが、たまにフワッとカーブを繰り出したりするのです。

大谷は日本ハムに在籍した当時から球数が多かった。あの体の柔軟性があるからもった。なにをか言わんやですが、ツーシームなど、「もう1つ」の球種を習得していれば、ひょっとして、肩、肘への負担が若干軽減され、故障することがなかったのでは…、と思ってしまうわけです。

来年は打席に立ちながら肘を治していくという。この壁をどのように克服していくのか。おそらく必ず再びマウンドに立つ日がくるんだろうけど、そのときどう変わっているのか。スーパースターへの道を突き進む大谷をじっくり応援したいです。

では、みなさま、メリー・クリスマス! 良いお年を…。(日刊スポーツ評論家)