広島赤松真人外野手(36)が13日、今季ダメなら引退の覚悟を示した。広島・廿日市市の大野練習場で自主トレを実施。引き際について「戦力になれないのであれば、コンディションがよくても覚悟はある」と踏み込んだ。17年1月に胃がんの摘出手術を受け、過酷な抗がん剤治療を乗り越えてきたが、今季は37歳のシーズン。進退をかけ、奇跡の1軍出場を狙う。

赤松の口から漏れたのは「覚悟」だった。今季について語るうち、自ら「引退というのもあるし…」と切り出した。「(来年以降も)やりたいのはやりたいけど、戦力になれないのであれば、覚悟はあります」。昨季ウエスタン・リーグ全日程を終えた際に「ラスト1年。その気持ちで闘いたい」と話しているが、引き際にここまで踏み込むのは初めてだ。

17年1月に胃がんを摘出した。リンパ節に転移が見つかり、同7月まで抗がん剤治療を続けた。生き残れるのか。それしか考えられなかった。昨年2軍戦で復帰したが1軍出場はならず。オフに減額制限いっぱい、25%ダウンの推定年俸2025万円で契約更改した。

全盛期の肉体でない。先日も梅干し1個を胃が受けつけず、嘔吐(おうと)した。1カ月に1度の検診、3カ月に1度のCTスキャンを受ける。年に1度は胃カメラをのむ。それでも悲壮感は見せない。「手術した分、どこかでマイナスがある。補えばいいんです」と笑いとばす。

代走、守備固めのスペシャリストになる。「代走、守備はごまかしが利く。(投球フォームを)盗んでしまえば走れる。打者を見れば守備位置を変えられる。それができるのがベテラン。なんとかできるんじゃないかと思う」。かつては巧打を誇ったが「今の自分にはヒットなんでどうでもいい」。1軍でどう働くかだけを考えている。

一方で、これ以上ない手応えを感じてもいる。この日はキャッチボール、ティー打撃、室内フリー打撃で軽快な動きを見せた。「(動きがよくて)誰も僕が病気をしたと思わなくなったので、自分から言うようにしている」と、ジョークも口をつく。胃がん摘出手術を経て1軍の舞台に戻った例はない。背水の赤松が、奇跡の復活劇を完成させる。簡単に現役をあきらめるつもりはない。【村野森】